拒否権付株式(きょひけんつきかぶしき)👁 閲覧数:453回

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M&A用語解説

拒否権付株式(きょひけんつきかぶしき)

拒否権付株式とは、株主総会(取締役会設置会社では株主総会又は取締役会)において決議すべき事項のうち、その決議のほか、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とする旨を定めた種類株式(会社法108条1項8号)をいい、一般に「黄金株」とも呼ばれる。種類株式の一つであり、会社が定款で定めた事項について、特定の種類の株式を有する種類株主全体に、対象とされた事項について事実上の拒否権を与える仕組みである。

この定めがある場合、定款で定めた事項は、株主総会、取締役会又は清算人会の決議のほか、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない(会社法323条)。ただし、その種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない(同条ただし書)。拒否権付株式の種類株主全体の意思が対象とされた事項の成立を左右するため、その株式が少数の株主、特に1名に集中している場合には、持株比率が小さくても、対象とされた事項の成立を左右し得る。

中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」は、事業承継における種類株式の活用方法の一つとして拒否権付種類株式を挙げ、後継者が成長して単独で経営に関する意思決定を適切に行えるようになるまでの間、先代経営者が一定の重要な決議事項(例えば、取締役や監査役の選任・解任や報酬の決定、多額の投資、事業譲渡や合併といったM&A、重要な資産の譲渡等)について拒否権を保有し、後継者による会社経営を監督できるようにする場合等に活用することが考えられるとしている(同ガイドライン106頁)。既存の会社が新たに種類株式を導入する場合には、株主総会の特別決議による定款変更が必要である(同106頁)。一般に、拒否権付株式は、経営統合や取締役の選解任などを拒否権の対象として友好的な第三者に保有させ、敵対的買収への防衛策として用いられることもある。ただし、上場会社については、取締役の過半数の選解任その他の重要な事項について種類株主総会の決議を必要とする拒否権付種類株式の発行は、取引所の上場制度上、一定の例外を除き上場廃止基準の対象となる。

※拒否権の対象とする事項は、会社ごとに定款で定められる。個別の会社の拒否権付株式の内容は、定款の定めを確認する必要がある。

なぜM&Aで重要か

M&Aの対象会社が拒否権付株式を発行している場合、定款で拒否権の対象とされた事項は、拒否権付株式の種類株主による種類株主総会の決議がなければ効力を生じない(会社法323条)。同ガイドラインは、拒否権の対象となり得る重要な決議事項の例として、事業譲渡や合併といったM&Aを挙げている(同106頁)。そのため、事業譲渡や合併等の組織再編に加え、株式譲渡による買収を検討する際にも、買収後の支配関係への影響を含め、拒否権付株式の有無、保有者、拒否権の対象事項を事前に把握しておくことが実務上重要になる。

譲り受け側にとっては、デューデリジェンスにおいて定款や株主構成を確認し、拒否権付株式が存在する場合には、各保有者の意向を確認するとともに、必要な種類株主総会の決議を得られる見込みや、株式の取得などの手当てを、最終契約までに検討しておく必要がある。譲り渡し側にとっても、拒否権の存在が取引の障害にならないよう、交渉の早い段階で整理しておくことが望ましい。

事業承継の場面では、拒否権付株式の保有者が死亡した場合などに、相続によって株式が分散し、意図しない者に拒否権が移るおそれがある。拒否権付株式について相続による移転を防ぎたい場合には、拒否権付株式の内容に、会社法108条1項6号の取得条項を併せて定める設計も考えられる。同ガイドラインは、取得条項付種類株式について、株主の死亡を取得条項における条件としておくことで、相続による株式の分散を防止できる例を紹介している(同106頁)。拒否権付株式を導入する際は、目的に応じた設計について、弁護士や司法書士等の専門家に相談することが有用である。

この用語のカテゴリー

会社法買収防衛策

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2026年10月1日 | 最終更新日: 2026年10月16日
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