事業譲渡(じぎょうじょうと)👁 閲覧数:786回

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M&A用語解説

事業譲渡(じぎょうじょうと)

事業譲渡とは、単なる個別資産の売却ではなく、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた事業活動の全部または重要な一部を譲受人に引き継がせる取引です。旧商法245条1項1号の「営業譲渡」について、最高裁昭和40年9月22日大法廷判決は、これらの要素に加えて、譲渡会社が譲渡の限度に応じて法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものと判示しており、この判例は、株式会社について会社法467条の「事業の全部または重要な一部の譲渡」に当たるかどうかを判断する際にも参照されています。譲渡の対象には、工場や設備などの資産だけでなく、取引先との契約関係やノウハウなどが含まれます。また、事業に従事する従業員の労働契約を承継させる場合には、原則として従業員本人の承諾が必要です。かつて商法上は「営業譲渡」と呼ばれていましたが、2006年の会社法施行により、会社法では「事業譲渡」という用語が採用されました。現在も、会社法では「事業譲渡」という用語が用いられる一方、商法では商人による取引について「営業譲渡」という用語が用いられています。

会社法上、株式会社が事業の全部を譲渡する場合や、「事業の重要な一部」を譲渡する場合には、原則として株主総会の特別決議による承認が必要です(会社法467条、309条2項11号)。ただし、事業の一部を譲渡する場合において、譲渡する資産の帳簿価額が譲渡会社の総資産額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)以下であるときは、法律上「事業の重要な一部の譲渡」には該当せず、株主総会の承認決議は不要とされています(会社法467条1項2号かっこ書き)。事業譲渡は、合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付のような組織再編行為(会社法第五編)とは会社法上別に位置づけられた行為であり、この点は営業権(のれん)の税務上の取扱いを考えるうえでも区別しておく必要があります。

事業譲渡では、会社そのものを引き継ぐ株式譲渡とは異なり、譲渡対象となる資産・負債や契約を個別に選んで引き継ぐことができます。そのため、買い手側は簿外債務や不採算部門を引き継ぐリスクを避けやすく、売り手側も不採算事業を切り離して残る事業の経営基盤を強化しやすいという特徴があります。一方で、契約関係や許認可は原則として自動的には引き継がれず、取引先の個別の同意や、許認可の再取得が必要になる場合があります。また、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲渡会社の事業によって生じた債務について弁済の責任を負う可能性がある点にも注意が必要です(会社法22条。商人間の営業譲渡については商法17条に同様の規定があります)。なお、事業譲渡後遅滞なく、譲受会社がその本店所在地で免責の登記を行った場合には、この責任を負わないこととされています。また、譲受会社および譲渡会社から第三者に対して免責の通知をした場合には、その通知を受けた第三者との関係で同様に責任を負わないこととされています(会社法22条2項)。

従業員との労働契約についても、事業譲渡では自動的には引き継がれず、原則として従業員一人ひとりの個別の承諾が必要です。この点は、労働契約承継法に基づき、分割契約等の定めや異議申出の手続などに従って、労働者本人の個別の同意を得ることなく労働契約が承継される場合がある会社分割とは異なる大きな特徴です。

税務面では、事業譲渡で移転する資産は、消費税法上、資産の種類ごとに課税・非課税が判定されます。たとえば機械設備や棚卸資産、営業権(のれん)に相当する対価は課税対象となる一方、土地や有価証券、金銭債権の譲渡は非課税とされます(国税庁タックスアンサーNo.6201、国税庁質疑応答事例「営業の譲渡をした場合の対価の額」)。

※個別の取引における会社法・税務・労務上の判断については、弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。

なぜM&Aで重要か

事業譲渡は、会社全体ではなく特定の事業だけを譲渡したい、あるいは特定の事業だけを譲り受けたいというニーズに対応できるスキームです。中小企業の事業承継の場面では、後継者が見つからない一部門だけを譲渡して残りの事業は自社で継続する、複数事業を営む会社が主力事業以外を切り離して経営資源を集中する、買い手側が対象企業の特定の事業だけを取得して自社の既存事業と組み合わせるといった活用がされています。

また、株式譲渡のように会社ごと(簿外債務や偶発債務を含めて)引き継ぐことに抵抗がある買い手にとって、譲り受ける資産・契約を個別に選べる事業譲渡は、リスクを限定した取引方法として選択されることがあります。

この用語のカテゴリー

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2016年10月21日 | 最終更新日: 2026年10月16日
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