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M&A用語解説
議決権(ぎけつけん/Voting Right)
議決権とは、株主が株主総会において会社の意思決定に参加し、決議事項に賛否を投じることができる権利をいう。会社法上、株主は原則としてその有する株式一株につき一個の議決権を有し(一株一議決権の原則)、単元株式数を定款で定めている会社では、一単元の株式につき一個の議決権を有する(会社法第308条第1項)。なお、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて、その経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主については、議決権が認められず(会社法第308条第1項括弧書き)、株式会社が保有する自己株式についても議決権は認められない(同条第2項)。
議決権は、株主が会社経営に関与するための権利であることから、剰余金配当請求権等の自益権(会社から経済的利益を受ける権利)とは区別され、共益権(会社の経営に参与する権利)の代表例とされる。単元未満株式のみを保有する株主には、定款に別段の定めがない限り議決権が認められない。
株主総会の決議は、その重要度に応じて要件が異なる。定款に別段の定めがない限り、普通決議は議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席(定足数)と、出席株主の議決権の過半数の賛成により成立する(会社法第309条第1項)。これに対し、定款変更・合併・株式交換等の重要事項を決議する特別決議は、議決権の過半数(定款で3分の1以上と定めた場合はその割合)を有する株主の出席と、出席株主の議決権の3分の2(定款で上回る割合を定めた場合はその割合)以上の賛成を要する(同条第2項)。
※種類株式(議決権制限株式等)を発行している会社では、株式の種類ごとに議決権の内容が異なる場合があるため、定款・株式の内容を個別に確認する必要がある。
M&Aの実務においては、対象会社の議決権をどの程度取得するかが、買収後にどこまで経営の意思決定を主導できるかを直接左右する。定款に別段の定めがない通常の場合、議決権の過半数を取得すれば、株主総会の普通決議を単独で可決することができ、取締役の選解任等を通じて会社の経営を支配するうえで重要な基準となる。また、議決権の3分の2以上を取得すれば、定款変更や合併・株式交換等に必要となる特別決議も単独で可決できる。逆に、議決権の3分の1超を保有する株主は、株主総会に出席して反対票を投じることにより、通常、特別決議の成立を単独で阻止できるため、実務上は拒否権的な地位を有するとされる。
このため、株式譲渡・第三者割当増資・公開買付け(TOB)等のM&Aスキームにおいては、取得する株式数(議決権比率)の設計が交渉上の重要な論点となる。完全子会社化を目指す場合は原則として議決権の100%取得を目指す一方、資本業務提携等の場面では、あえて特別決議を阻止できる3分の1超や、経営に一定の関与を確保できる過半数程度の議決権取得にとどめるなど、目的に応じた議決権比率の設計が行われる。
