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M&A用語解説
吸収合併(きゅうしゅうがっぺい)
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2条27号)。合併後に存続する会社を「存続会社」、合併により消滅する会社を「消滅会社」と呼びます。2以上の会社が合併して新たに設立する会社に権利義務の全部を承継させる新設合併(会社法2条28号)とは、権利義務の承継先が既存の会社か新たに設立される会社かという点で区別されます。
以下では、存続会社と消滅会社がいずれも株式会社である吸収合併を中心に説明します。この場合、存続会社は吸収合併契約で定めた効力発生日に消滅会社の権利義務を承継します(会社法750条1項)。資産や契約を個別に移転するのではなく、権利義務の全部が一括して承継される点が特徴です。
手続としては、当事会社が吸収合併契約を締結し(会社法748条)、消滅会社の株主に交付する対価の内容や効力発生日などを定めます(会社法749条1項)。対価は存続会社の株式に限られず、社債、新株予約権、金銭その他の財産とすることもできます(会社法749条1項2号)。存続会社と消滅会社がいずれも株式会社である場合、両社は原則として、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議によって吸収合併契約の承認を受ける必要があります(会社法783条1項・会社法795条1項・会社法309条2項12号)。
ただし、一方の会社が、自社の完全子会社等による保有分も含めて、他方の会社の総株主の議決権の10分の9(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上を有する特別支配会社(会社法468条1項)である場合には、一定の例外を除き、存続会社が消滅会社の特別支配会社であれば消滅会社側の、消滅会社が存続会社の特別支配会社であれば存続会社側の株主総会の承認を省略できる略式手続があります(会社法784条1項・会社法796条1項)。また、存続会社が交付する対価について法令の定める方法で算定した額が、存続会社の純資産額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えない場合には、存続会社側の株主総会の承認を省略できる簡易手続があります(会社法796条2項)。もっとも、合併差損が生じる場合や、公開会社でない存続会社が譲渡制限株式を交付する場合などには簡易手続を利用できず、一定数の株主が反対を通知した場合も株主総会の承認が必要になります(会社法796条2項ただし書・3項)。
一定の場合を除き、反対株主には株式買取請求権が認められます(会社法785条・会社法797条)。また、吸収合併では消滅会社と存続会社の双方で債権者異議手続が必要であり(会社法789条1項1号・会社法799条1項1号)、この手続が終了していない場合は、効力発生日が到来しても合併の効力は生じません(会社法750条6項)。このほか、合併に関する書面等の事前・事後の備置き(会社法782条・会社法794条・会社法801条)が求められ、効力発生日から2週間以内に消滅会社の解散の登記と存続会社の変更の登記を行います(会社法921条)。消滅会社の解散は、この登記の後でなければ第三者に対抗できません(会社法750条2項)。
税務上は、法人税法上の「適格合併」(法人税法2条12号の8)に該当するかどうかで取扱いが大きく異なります。適格合併に該当するには、原則として消滅会社の株主に存続会社または法人税法上の合併親法人(存続会社の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する一定の法人)の株式以外の資産が交付されないことに加え、当事会社間の資本関係等に応じた要件を満たす必要があります。なお、剰余金の配当等として交付される金銭等、反対株主の買取請求に基づく対価として交付される金銭等、合併の直前に存続会社が消滅会社の発行済株式等の3分の2以上を保有している場合に存続会社以外の株主に交付される金銭等は、この対価要件の判定から除かれます。適格合併では、消滅会社の資産・負債を帳簿価額により存続会社へ引き継いだものとして所得を計算するため(法人税法62条の2)、合併による譲渡損益は計上されません。適格合併に該当しない非適格合併では、消滅会社が資産・負債を合併時の時価により存続会社へ譲渡したものとして譲渡損益を計算します(法人税法62条)。また、適格合併では消滅会社の未処理欠損金額を存続会社が引き継げる場合がありますが(法人税法57条2項)、支配関係の継続期間や、共同で事業を行うための合併に該当するかどうかなどによっては引継ぎが制限されます(法人税法57条3項)。
※適格要件の判定や個別の税務処理については、税理士等の専門家にご確認ください。
吸収合併は、親会社が子会社を取り込むグループ内再編や、買収した会社を買い手企業に統合する場面などで用いられる手法の一つです。存続会社は消滅会社の権利義務を包括的に承継するため、帳簿に計上されていない簿外債務が存在すればそれも引き継ぐことになり、合併前の事由に起因する偶発債務などの潜在的な負担が合併後に顕在化した場合には、存続会社がその影響を受ける可能性があります。そのため、合併前のデューデリジェンスで潜在的なリスクを把握しておくことが重要です。
また、許認可の中には合併によって当然には引き継がれず、改めて取得や届出が必要となるものがあるため、事業に必要な許認可ごとに根拠法令を確認する必要があります。対価として金銭のみを交付する交付金合併や、存続会社の親会社株式を交付する三角合併も、吸収合併の一形態です。
