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M&A用語解説
筆頭株主(ひっとうかぶぬし)
筆頭株主とは、ある会社の株主のうち、保有する株式の数が最も多い株主をいう。「筆頭株主」を定義した法令の規定はない。東京証券取引所の「会社情報適時開示ガイドブック(2026年7月版)」(PDF)は、上場会社に開示が求められる「主要株主である筆頭株主の異動」の説明で、筆頭株主を「主要株主のうち所有株式数(中略)の最も多い株主」としており、この場面では所有株式数で順位をみる(会社情報適時開示ガイドブック226頁)。
筆頭株主と混同しやすい主要株主は、自己または他人の名義で総株主等の議決権の10%以上(内閣府令で定めるものを除く)を保有している株主をいう(金融商品取引法163条1項)。主要株主が議決権の割合で決まるのに対し、一般的な意味での筆頭株主は株主の間の順位で決まる。そのため、議決権の割合が10%に満たない株主が筆頭株主となることもあれば、10%以上を保有していても、より多く保有する株主がいれば筆頭株主ではない。東京証券取引所が上場会社に開示を求めているのは、主要株主の異動と、主要株主に当たる筆頭株主の異動である(会社情報適時開示ガイドブック226頁)。
株主は、原則として1株につき1個の議決権を持つが、単元株式数を定款で定めた会社では1単元につき1個となり、会社が保有する自己株式には議決権がない(会社法308条1項・2項)。また、株主総会で議決権を行使できる事項を制限した議決権制限株式を発行することもできる(会社法108条1項3号)。このため、持株数や持株比率の順位と、議決権の数や議決権比率の順位は一致しないことがある。開示資料などで筆頭株主や保有割合を読む際は、株式数と議決権数のどちらを基準にした数値かを確認したい。東京証券取引所の適時開示でも、主要株主等の異動の開示事項には、議決権の数と所有株式数の両方が含まれている(会社情報適時開示ガイドブック227頁)。
筆頭株主であることは、会社を支配していることを直ちに意味しない。株主総会の普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で成立する(会社法309条1項)。特別決議は、議決権の過半数(定款で3分の1以上の割合を定めた場合はその割合以上)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2(定款でこれを上回る割合を定めた場合はその割合)以上の賛成で成立する(会社法309条2項)。東京証券取引所の上場規程では、親会社のほか、近親者などと合わせて上場会社の議決権の過半数を占める主要株主を「支配株主」としている(会社情報適時開示ガイドブック236頁)。なお、「大株主」は保有株式数の多い株主を広く指す呼び方であり、筆頭株主はその中で最も多く保有する株主にあたる。
※個別の事案については、弁護士等の専門家にご確認ください。
M&Aでは、株主構成と議決権の分布によって、交渉の相手や必要な手続が変わる。事業譲渡(事業の全部の譲渡等)には、原則として株主総会の決議による契約の承認が必要であり(会社法467条1項)、この決議は特別決議とされている(会社法309条2項11号)。合併・会社分割・株式交換などの組織再編でも、株主総会の承認を要する場合、その決議は特別決議となる(会社法309条2項12号)。ただし、相手方が特別支配会社である場合など、承認を要しない場合もある(会社法468条1項、会社法784条1項、会社法796条1項)。特別決議には出席した株主の議決権の少なくとも3分の2の賛成が必要なため、筆頭株主の議決権だけでこの割合に届かない場合、決議の成否は他の株主の賛否にも左右される。
このため、譲り受け側はデューデリジェンスの中で、株主名簿等により株主の構成と議決権の割合を確認し、筆頭株主を含む主要な株主の意向を把握しておく必要がある。株式譲渡で議決権の過半数や3分の2以上の取得を目指す場合には、筆頭株主の株式だけでは足りず、他の株主からの取得も必要になることがある。
