株式交換(かぶしきこうかん)👁 閲覧数:314回

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M&A用語解説

株式交換(かぶしきこうかん)

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させる組織再編行為をいい、既存の会社同士の間で完全親子会社関係を作り出す手法です(会社法2条31号)。子会社となる会社(株式交換完全子会社)の株主が保有する株式(株式交換完全親会社が既に保有するものを除きます)は、効力発生日に親会社となる会社(株式交換完全親会社)が取得し(会社法769条1項)、株主は通常、その対価として株式交換完全親会社の株式その他の財産の割当てを受けます(会社法768条1項2号・3号)。会社分割が事業そのものを他の会社へ移転する手法であるのに対し、株式交換は対象会社の事業・資産・負債を移転させず、株主が保有する株式の帰属だけを変える点に特徴があります。以下では、株式交換完全子会社・株式交換完全親会社がいずれも株式会社である場合を前提に説明します。

株式交換を行うには、株式交換完全子会社と株式交換完全親会社との間で株式交換契約を締結し(会社法767条)、対価の内容や効力発生日などを定める必要があります(会社法768条1項2号・3号・6号)。原則として、両社とも株主総会の決議による契約承認が必要で(会社法783条1項、会社法795条1項)、この決議は特別決議です(会社法309条2項12号)。ただし、当事会社の一方が他方の特別支配会社(ある株式会社の総株主の議決権の10分の9以上(定款で上回る割合を定めた場合はその割合以上)を、他の会社等が有する場合のその会社。会社法468条1項)である場合には、支配される側の株主総会承認を省略できます(略式株式交換。株式交換完全子会社側の承認省略は会社法784条1項、株式交換完全親会社側の承認省略は会社法796条1項)。また、株式交換完全親会社が交付する対価等について法令の定める方法で算定した額が、株式交換完全親会社の純資産額(法務省令で定める方法により算定される額)の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えない場合には、株式交換完全親会社側の株主総会決議が不要となります(簡易株式交換。会社法796条2項)。ただし、対価が譲渡制限株式等である場合など一定の場合には承認を省略できず(会社法784条1項ただし書、会社法796条1項ただし書・2項ただし書)、簡易株式交換でも、一定数の株主が反対した場合には株主総会決議が必要となります(会社法796条3項)。会社法上の反対株主は、一定の例外を除き、株式交換完全子会社に対して(会社法785条1項)、また株式交換完全親会社に対して(会社法797条1項)、自己の株式を公正な価格で買い取るよう請求することができます。簡易株式交換に当たる場合は、一定の例外を除き、株式交換完全親会社側の反対株主には買取請求権がありません(会社法797条1項ただし書)。株式交換では対象会社の事業・資産・負債が移転するわけではないため、会社分割と異なり、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(労働契約承継法)の適用対象にはなりません(労働契約承継法2条1項)。また、債権者保護手続も原則として不要です。ただし、株式交換完全子会社が発行した新株予約権付社債に付された新株予約権が株式交換契約新株予約権である場合には、その新株予約権付社債の社債権者が異議を述べることができ(会社法789条1項3号)、株式交換完全子会社の株主に交付する金銭等が株式交換完全親会社の株式その他これに準ずるものとして法務省令で定めるもののみである場合以外の場合や、新株予約権付社債の社債に係る債務を株式交換完全親会社が承継する場合(会社法768条1項4号ハ)には、株式交換完全親会社の債権者が異議を述べることができます(会社法799条1項3号)。

税務上は、株式交換完全子法人の株主に株式交換完全親法人等の株式以外の資産が交付されないこと(一定の例外があります)を基本とし、完全支配関係、支配関係又は共同事業に関する所定の要件を満たす株式交換は「適格株式交換」に該当し、株式交換完全子会社が保有する資産について、株式交換を理由とする時価評価課税は原則として行われません(法人税法2条12号の17)。株式交換完全親会社と株式交換完全子会社との間に完全支配関係とまではいえない支配関係がある場合の株式交換が適格となるには、株式交換完全子会社の従業者のおおむね80%以上が引き続きその業務に従事することが見込まれることや、主要な事業が引き続き行われることが見込まれることなどの追加の要件を満たす必要があります(法人税法2条12号の17ロ。共同で事業を行うための株式交換は別の要件によります)。適格株式交換等に該当しない株式交換では、株式交換完全子法人が株式交換の直前に有する時価評価資産(帳簿価額が1,000万円に満たない資産など、政令で定めるものを除きます。法人税法施行令123条の11第1項)の評価益・評価損が、株式交換の日の属する事業年度の所得の計算上、益金の額又は損金の額に算入されます。ただし、株式交換の直前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に完全支配関係があった場合は、この規定の対象から除かれます(法人税法62条の9第1項)。

※適格株式交換に該当するかどうかの判定は個別の資本関係・要件充足状況によって異なるため、実行にあたっては税理士等の専門家にご確認ください。

なぜM&Aで重要か

株式交換は、買収側が現金を用意しなくても、自社の株式を対価として対象会社を100%子会社化できる点にM&A上の意義があります(会社法768条1項2号イ)。自社の株式を対価に充てられるため、買収資金の調達が難しい場合の選択肢となります。また、対象会社の法人格を維持したまま完全子会社化できるため、ブランドや契約関係、許認可等への影響を抑えやすいという特徴があります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール条項や、許認可に関する個別法上の届出・承認等が必要となる場合があります。

中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料(令和6年8月・PDF)は、中小M&Aで主に利用される手法として株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併などを紹介する一方、株式交換・株式移転は説明の対象とせず、注記で触れるにとどめています(中小M&Aガイドライン参考資料1–3頁)。株式交換は、既存の会社同士で完全親子会社関係を作る手法であるため(会社法2条31号)、例えば、グループ内の兄弟会社を持株会社の下に完全子会社として集約する組織再編のような場面で用いることができます。株式交換では、効力発生日に株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の発行済株式のうち、既に保有している株式を除く全部を取得し、完全親子会社関係が成立します(会社法769条1項)。株式交換契約で金銭など株式等以外の財産を対価と定める場合(会社法768条1項2号ホ)には、少数株主に株式交換完全親会社の株式を交付せず金銭等を交付できるため、スクイーズアウトの一手法としても位置付けられます。なお、既存の会社ではなく新たに設立する株式会社を完全親会社とする場合は、株式交換ではなく株式移転となります(会社法2条32号)。

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2016年10月6日 | 最終更新日: 2026年10月20日
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