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M&A用語解説
スキーム(すきーむ/Scheme)
スキームとは、M&Aにおいて、会社や事業を譲り渡し側から譲り受け側へ引き継ぐために用いる方法(取引の枠組み)をいう。同じ意味で「手法」という言葉を使う資料もあり、たとえば中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」参考資料(令和6年8月・PDF)は、「中小M&Aの主な手法と特徴」として、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併などを紹介している(中小M&Aガイドライン参考資料1–3頁)。
代表的なスキームは、株式の取得などによって会社の支配関係を移すものと、事業や権利義務そのものを移転・承継させるものに分けて考えると理解しやすい。前者には株式譲渡、株式交換・株式移転などがあり、後者には事業譲渡、会社分割、合併などがある。手法ごとに法的効果や必要な手続は異なり、実際の取引では複数の手法を組み合わせることもある(中小M&Aガイドライン参考資料3頁)。
中小M&Aガイドライン参考資料1–2頁によれば、株式譲渡は、譲り渡し側の株主が保有する発行済株式を譲り受け側に譲渡する手法であり、株主が変わるだけで会社組織はそのまま引き継がれ、資産、負債、従業員や第三者との契約、許認可等は原則として存続する。手続は他の手法に比べて相対的に簡便とされる一方、簿外債務や偶発債務もそのまま引き継ぐことになり、契約にチェンジ・オブ・コントロール条項がある場合は、契約を続けるために相手方との協議が必要になることがある。これに対し事業譲渡は、事業の全部または一部を譲り受け側に譲渡する手法であり、資産、負債、契約等を個別に移転させ、債権者や従業員から一つ一つ同意を得て契約関係を切り替える必要があるため、手続は株式譲渡より煩雑になることが一般的とされる。また、許認可等は譲り受け側に承継されないことが多く、その場合は譲り受け側で新たに取得する必要がある。一方で、事業の一部を手元に残すことができ、譲り受け側は特定の事業・財産だけを譲り受けられるため、簿外債務・偶発債務のリスクを遮断しやすいとされる。
会社分割と合併は、会社法が定める組織再編の手続であり、権利義務を包括的に承継させる点に特徴がある。いずれも原則として、債権者が異議を述べることができる期間を1か月以上設ける債権者保護手続を含む会社法上の手続や登記が必要となり、許認可は個別の業法によってそのまま引き継がれる場合もある(中小M&Aガイドライン参考資料2–3頁)。会社法上、吸収分割は、株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させることをいい(会社法2条29号)、吸収合併は、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう(会社法2条27号)。新たに設立する会社に承継させる新設分割(会社法2条30号)や新設合併(会社法2条28号)もある。
株式交換は、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させることをいい、株式移転は、一または二以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいう(会社法2条31号・32号)。
※個別の取引については、弁護士・税理士等の専門家にご確認ください。
どのスキームを選ぶかによって、引き継がれる資産・負債・契約・許認可、簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスク、必要となる同意や手続の範囲、かかる時間や費用が変わる(中小M&Aガイドライン参考資料1–3頁)。たとえば、会社をそのまま引き継ぎたい場合と、特定の事業だけを切り出して譲り渡したい場合とでは、適したスキームが異なる。
このため、譲り受け側はデューデリジェンスで簿外債務や許認可、主要な契約の内容などを確認し、譲り渡し側の希望(残したい事業の有無など)も踏まえたうえで、弁護士・税理士等の専門家と相談しながらスキームを検討することが重要である。
