ダイリューション(だいりゅーしょん/Dilution)👁 閲覧数:305回

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M&A用語解説

ダイリューション(だいりゅーしょん/Dilution)

ダイリューションとは、新株の発行等によって自己株式を除く発行済株式の数が増加し、既存株主の持株比率や議決権比率、1株当たりの利益・価値が低下し得る現象をいい、日本語では「希薄化」と呼ばれます。

主な発生要因には、第三者割当増資などの募集株式の発行や自己株式の処分(会社法199条1項)、新株予約権(ストックオプションを含みます)の行使、新株予約権付社債に付された新株予約権の行使(会社法2条22号)、株式交換など自社株式を対価とするM&Aがあります。株式交換完全親株式会社の株式を対価とする場合は、その株式の数等を株式交換契約に定めます(会社法768条1項2号イ)。

ダイリューションには、既存株主の議決権比率が下がり得る「議決権の希薄化」と、1株当たり利益や1株当たりの価値が下がり得る「経済的な希薄化」の二つの側面があります。会計上は、1株当たり当期純利益を、普通株式に係る当期純利益を普通株式の期中平均株式数で除して算定するとされています(企業会計基準委員会「企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」」12項)。このうち「潜在株式」とは、保有者が普通株式を取得することができる権利や普通株式への転換請求権等が付された証券又は契約をいい(企業会計基準第2号9項)、潜在株式に係る権利の行使を仮定して算定した1株当たり当期純利益(潜在株式調整後1株当たり当期純利益)が、1株当たり当期純利益を下回る場合に、その潜在株式は「希薄化効果」を有するとされています(企業会計基準第2号20項)。希薄化効果を有する場合には、潜在株式調整後1株当たり当期純利益を算定します(企業会計基準第2号21項)。

なぜM&Aで重要か

会社法は、既存株主の利益への影響が大きい募集株式の発行等について、手続を定めています。募集事項の決定は株主総会の決議によるのが原則ですが(会社法199条2項)、公開会社では、払込金額が特に有利な場合を除き、取締役会が決定します(会社法201条1項)。払込金額が引受人に特に有利な金額である場合(有利発行)は、公開会社であっても株主総会の特別決議が必要であり(会社法309条2項5号)、取締役は、その株主総会で当該払込金額で募集を行うことを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法199条3項)。取締役会の決議で募集事項を定めた公開会社は、原則として、払込期日(払込期間を定めた場合はその初日)の2週間前までに、株主へ募集事項を通知する必要があります(会社法201条3項)。ただし、払込期日(払込期間を定めた場合はその初日)の2週間前までに金融商品取引法の届出をしている場合など、株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この通知は不要です(会社法201条5項)。

また、公開会社において、募集株式の引受人(その子会社等を含みます)が引受け後に有することとなる議決権の数が、引受人全員が株主となった場合の総株主の議決権の数の2分の1を超えるときは、原則として、払込期日の2週間前までに株主への通知が必要です(会社法206条の2第1項)。総株主の議決権の10分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)以上を有する株主が、その通知から2週間以内に反対を通知したときは、原則として株主総会の決議による承認が必要です(会社法206条の2第4項)。ただし、公開会社の財産の状況が著しく悪化している場合において、事業の継続のため緊急の必要があるときは、この限りではありません。さらに、募集株式の発行等が法令・定款に違反する場合や著しく不公正な方法により行われる場合に、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主はその差止めを請求できます(会社法210条)。

M&Aや資本提携で自社株式を対価とする場合や第三者割当増資を行う場合、既存株主には議決権比率の低下が生じ得るほか、利益の増加が株式数の増加に見合わない場合にはEPS(1株当たり利益)が低下することもあります。一方で企業側から見れば、資金調達や買収対価の一部として一定のダイリューションを許容せざるを得ない場合もあるため、希薄化の程度と、調達資金の使途や統合によるシナジー等の効果とを比較検討し、既存株主に十分に説明することが実務上重要になります。

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2026年10月1日 | 最終更新日: 2026年10月20日
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