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M&A用語解説
資本政策(しほんせいさく)
資本政策とは、企業が、資金調達、株主構成、株式の発行・保有の割合などを、事業計画に沿って計画し、実行することをいう。会社法には「資本政策」という名称の手続は定められておらず、実際には、募集株式の発行、新株予約権の発行、株式の分割、自己株式の取得など、会社法が定める個々の手続を組み合わせて行われる。
株式会社が株式を引き受ける者を募集するときは、その都度、募集株式の数や払込金額などの募集事項を定めなければならない(会社法第199条第1項)。募集事項は原則として株主総会の決議で定めるが、公開会社では、払込金額が引き受ける者に特に有利な金額である場合を除き、取締役会の決議で定める(会社法第201条第1項)。払込金額が特に有利な金額である場合には、取締役は株主総会で、その金額で募集することが必要な理由を説明しなければならない(会社法第199条第3項)。特定の第三者に新たな株式を割り当てて資金を調達する方法は、一般に第三者割当増資と呼ばれる。
新株予約権を発行するときは、目的である株式の数、行使に際して出資される財産の価額、行使できる期間などを、新株予約権の内容として定める(会社法第236条第1項)。役員や従業員に付与されるストックオプションには、一般に新株予約権が用いられる。新株の発行や新株予約権の行使によって発行済株式が増えると、既存の株主の持株比率は下がることがある(ダイリューション)。
このほか、株式分割をするときは、その都度、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議によって、分割の割合や基準日、効力発生日などを定める(会社法第183条第2項)。株主との合意により自己株式を有償で取得するには、原則として、あらかじめ株主総会の決議によって、取得する株式の数、交付する金銭等の内容と総額、取得できる期間(1年を超えられない)を定める(会社法第156条第1項)。
株主構成を考えるうえでは、議決権の割合も重要になる。定款の変更や合併などの組織再編を承認する株主総会の決議は、原則として、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって行う(会社法第309条第2項)。資本政策では、資金調達の必要性と、こうした決議に必要な議決権を含む経営の安定とのバランスを踏まえて、株式を発行する時期や割当先を検討することになる。
※個別の事案については、弁護士・税理士・公認会計士等の専門家にご確認ください。
M&Aでは、誰がどの程度の株式を持っているかが、交渉の進め方や必要な合意の範囲に影響する。株主が分散している場合には、株式譲渡の合意形成に時間を要することがあり、筆頭株主を含む主要な株主の意向を踏まえた検討が必要になる。また、未行使の新株予約権が残っている場合には、将来の行使によって株式が増えることがあるため、譲り受け側はデューデリジェンスで株主名簿や新株予約権の内容・残存状況を確認したうえで、その取扱いを検討することになる。
事業承継の場面では、相続に伴って株式が多数の相続人に分散すると、株主総会の運営などの株主管理コストが増えたり、株式の買取りを請求されて会社の資金が流出したりして、円滑な承継が妨げられる可能性があるとされる(中小企業庁「事業承継ガイドライン(第3版)」(PDF)、71頁)。既に分散した株式を集約する方法としては、会社または後継者が株主から株式を買い取るのが通常とされており(事業承継ガイドライン78頁)、自己株式の取得を含む資本政策の見直しが検討される。
