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M&A用語解説

ウェイバー(うえいばー/Waiver)

ウェイバー(waiver)とは、契約上の権利を持つ当事者が、その権利の全部又は一部を行使しないこと(権利放棄)や、相手方の契約違反について一定の権利を行使しないこと(不追及)などをいいます。M&Aや企業金融の分野では、主に、借入契約に付された財務制限条項(コベナンツ)への抵触について貸し手が違反を問わないことを認める場面や、M&Aの最終契約でクロージングの前提条件の一部をその条件の利益を受ける当事者が放棄する場面で用いられる言葉です。

金融機関からの借入契約には、純資産や利益を一定の水準に維持することなど、借り手の財務諸表の数値に基づく財務制限条項が付されることがあります。財務制限条項に抵触した場合、契約上、期限の利益の喪失事由とされ、借入金の即時一括返済を求められ得るのが一般的ですが、日本の実態を分析した研究が公表資料から収集した抵触事例では、約半数で猶予が与えられ、返済・借換えに至った例は一部にとどまると報告されています(一橋大学「日本における財務制限条項:実態と可能性」)。財務制限条項のウェイバーは、一般に、特定の条項違反を理由とする期限の利益喪失などの権利行使を見送るものであり、借入金の元本そのものを消滅させる民法上の債務の免除(民法519条)とは区別して理解する必要があります。

M&Aの株式譲渡契約などでは、クロージング(株式の譲渡と代金の支払い)の前提条件として、相手方の表明保証が正確であることや、契約上の義務が履行されていることなどが定められます。中小企業庁が公表している株式譲渡契約書のサンプルでは、前提条件が満たされていない場合に義務の履行を拒絶できる当事者は、任意の裁量によりその条件の一部又は全部を放棄できるとしたうえで、放棄によって条件が充足したとみなされるものではなく、表明保証違反に基づく責任なども減免されない旨が定められています(中小企業庁「株式譲渡契約書サンプル」第5条・第6条)。また、契約の一方当事者が相手方の違反を追及しなかったとしても、それが他の違反や将来の違反についての権利放棄を意味しない旨を定める条項(権利不放棄条項。いわゆるウェーバー条項)が置かれることもあります(JOGMEC用語辞典「ウェーバー条項」)。

※ウェイバーの範囲や効果は個別の契約内容によって異なるため、実際の対応にあたっては弁護士等の専門家にご確認ください。

なぜM&Aで重要か

M&Aでは、LBOローンなどの借入れによって買収資金を調達した場合、買収後の業績が計画を下回ると財務制限条項に抵触するおそれがあります。その際に貸し手からウェイバーを得られるかどうかは、期限の利益の喪失を避けて事業を継続するうえで重要な論点となるため、資金調達契約の締結段階で、財務制限条項の水準や抵触時の取扱いを確認しておくことが重要です。また、買収対象会社の既存の借入契約にチェンジオブコントロール条項その他のコベナンツが含まれている場合、M&Aの実行自体が条項への抵触事由となることがあるほか、M&A後の財務状況によって財務制限条項に抵触する可能性もあるため、デューデリジェンスで確認し、必要に応じてクロージング前に貸し手の承諾やウェイバーを得ておくことがあります。

最終契約書の前提条件についても、未充足の条件を放棄してクロージングするか、条件が満たされるまで待つかは重要な判断です。条件を放棄する場合でも、表明保証違反に基づく補償請求などの権利まで失うことのないよう、何を放棄し、何を放棄しないのかを明確にしておくことが大切です。

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2016年9月16日 | 最終更新日: 2026年10月16日
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