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M&A用語解説
現物出資(げんぶつしゅっし)
現物出資とは、株式会社の設立または募集株式の発行等に際して、金銭の代わりに不動産・有価証券・金銭債権・事業用資産など金銭以外の財産をもって出資の目的とする出資形態をいいます。出資者には、給付した財産の対価として株式が割り当てられます。
会社設立時に現物出資をすることができるのは発起人であり、設立時募集株式の引受人は金銭で払い込みます(会社法34条1項・会社法63条1項)。出資者の氏名または名称、目的財産とその価額、割り当てる設立時発行株式の数は、定款に記載・記録しなければ効力を生じません(会社法28条1号)。この場合は原則として裁判所が選任する検査役の調査を要しますが、現物出資財産と成立後に譲り受けることを約した財産について定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合、市場価格のある有価証券で価額が市場価格を超えない場合、弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受けた場合には、該当する財産について検査役の調査を要しません(会社法33条1項・10項)。募集株式の発行等における現物出資についても、原則として検査役の調査を要します(会社法207条1項)。ただし、①現物出資財産を給付する募集株式の引受人に割り当てる株式の総数が発行済株式の総数の10分の1を超えない場合、②現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合、③市場価格のある有価証券で価額が市場価格を超えない場合、④弁護士・公認会計士・税理士等の証明(不動産の場合は不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受けた場合、⑤会社に対する弁済期が到来している金銭債権で、その価額が当該金銭債権に係る負債の帳簿価額を超えない場合には、該当する財産について検査役の調査を要しません(会社法207条9項)。出資財産の価額が定款や募集事項で定めた価額に著しく不足するときは、設立時には発起人と設立時取締役が連帯して不足額を支払う義務を負い、価額の証明をした専門家も連帯して責任を負います(会社法52条1項・3項)。募集株式の発行等では、現物出資財産を給付した引受人が不足額を支払う義務を負い(会社法212条1項2号)、募集に関する職務を行った取締役等や価額の証明をした専門家も、不足額を支払う義務を負います(会社法213条1項・3項)。ただし、設立時の発起人(現物出資財産を給付した者と成立後に譲り受けることを約した財産の譲渡人を除きます)と設立時取締役は、検査役の調査を経た場合、または職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合に、この義務を負いません(会社法52条2項)。募集設立では、発起人と設立時取締役について、注意を怠らなかったことの証明による免責は認められません(会社法103条1項)。募集株式の発行等における取締役等も、検査役の調査を経た場合、または職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合に、この義務を負いません(会社法213条2項)。価額の証明をした専門家は、注意を怠らなかったことを証明した場合に責任を免れます(会社法52条3項・会社法213条3項)。
※検査役調査の要否の判断や財産の評価方法については、弁護士・公認会計士・税理士等の専門家にご確認ください。
現物出資は、役員や金融機関等が会社に対して有する貸付金債権などの金銭債権を現物出資し、負債を資本に振り替える、いわゆるDES(デット・エクイティ・スワップ)による財務改善・資本増強の場面で用いられます。この場合、会社法207条9項5号(弁済期が到来している金銭債権で、価額が負債の帳簿価額を超えない場合)または4号(専門家の証明)に該当するかどうかが、検査役の調査を省略できるかどうかの実務上のポイントとなります。
現物出資財産の評価が過大であった場合には、資本充実の観点から関係者が塡補責任を負うリスクがあるため、事業承継・資本政策の一環として現物出資を活用する際は、検査役調査の要否の見極めと、専門家による適正な財産評価の双方が欠かせません。
