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M&A用語解説
NDA(えぬ・でぃー・えー/Non-Disclosure Agreement・秘密保持契約)
NDAとは、Non-Disclosure Agreement(秘密保持契約)の略称で、M&Aの検討・交渉の過程で開示される非公開の情報について、情報を受け取る側が秘密を守る義務などを定める契約をいいます。M&Aの実務でも、「NDA」という略称が広く用いられています。契約の型(片務型・双務型)や条項の考え方は秘密保持契約のページで解説しており、本ページでは、M&Aの流れの中でNDAがどの場面で締結されるかを中心に整理します。
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(令和6年8月・PDF)の用語集は、秘密保持契約を、秘密保持を確約する趣旨で締結する契約と説明しています。具体的には、譲り受け側がノンネームシート(ティーザー)を参照して譲り渡し側に関心を抱いた場合に、より詳細な情報を入手するために譲り渡し側との間で締結するケースや、譲り渡し側や譲り受け側が仲介者・FAとの間で締結するケースがあり、後者は仲介契約・FA契約の中で秘密保持条項として含められるケースが多いとされています。また、「NDA(Non-Disclosure Agreement)」や「CA(Confidential Agreement)」ともいうと説明しています(中小M&Aガイドライン20頁)。つまり、NDAは「譲り渡し側と譲り受け側」「依頼者と仲介者・FA」といった、複数の当事者間で、それぞれ別の場面で結ばれ得る契約です。
案件の進み方は一律ではありませんが、中小M&Aガイドラインは、ノンネームシートによる打診に関心を示した候補先から譲り受け側となり得る数社程度をショートリスト化し、これらとの間で秘密保持契約を締結した上で、その後の手続を進めることが通常であるとしています(中小M&Aガイドライン44頁)。また、譲り渡し側の名称を含む企業概要書等の詳細資料の開示(ネームクリア)は、秘密保持を徹底する観点から、譲り渡し側からの同意を取得し、候補先との秘密保持契約を締結した上で実施される必要があるとされています(中小M&Aガイドライン93頁)。非公開の情報が実際に相手方へ渡る前に、秘密を守る取り決めを置いておく、という位置づけです。
秘密保持義務は、NDAだけでなく基本合意書にも定められることがあります。中小M&Aガイドラインの用語集は、基本合意書(LOI/MOU)について、基本的に法的拘束力がないものの、譲り受け側の独占的交渉権や秘密保持義務等については、法的拘束力を認めることが通常であると説明しています(中小M&Aガイドライン21頁)。一方で、資金繰り等の関係でクロージング(決済)を急ぐ必要がある場合には、基本合意を締結せず、最低限の秘密保持契約の締結のみに留めて、最終契約締結に直接進むケースもあるとされています(中小M&Aガイドライン47頁)。秘密保持の取り決めがどの契約書にどの範囲で置かれているかは、案件ごとに契約書で確認する必要があります。
NDAによって守ろうとする情報の中には、不正競争防止法上の「営業秘密」に当たり得るものがあります。不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものと定めています。NDAは当事者間で秘密保持の義務を負わせる契約上の取り決めであり、開示した情報が営業秘密として不正競争防止法の保護を受けるかどうかは、この定義に当たるかによって別に判断されます。NDAを締結したことだけで、情報が営業秘密に当たることになるわけではありません。
※個別の契約内容・取引については弁護士等の専門家にご確認ください。
M&Aの検討段階では、対象企業の財務状況や取引先、従業員に関する情報など、外部に出ていない機微な情報が相手方に開示されます。これらが漏洩すると、対象企業の事業運営や、取引先・従業員との関係に重大な影響を及ぼしかねません。NDAは、こうした情報を開示する前に、秘密を守る義務を相手方に負ってもらうための基本的な備えとなります。
一方で、NDAを締結することは、漏洩のリスクを物理的になくすものではありません。誰が情報にアクセスできるか、どの資料をいつ開示するかといった社内の情報管理体制を整えたうえで、NDAと併せて運用することが重要です。
