M&Aコンサル用語集TOP / サ行 / 善管注意義務閲覧数:289回
M&A用語解説
善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)
善管注意義務(善良な管理者の注意義務)とは、他人から一定の事務処理を委託された者が、その職業や社会的・経済的地位等に応じて通常期待される程度の注意をもって委任事務を処理すべき義務をいいます(民法644条)。株式会社と取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人等の役員等との関係は委任に関する規定に従うとされているため(会社法330条)、取締役等の役員はこの善管注意義務を負います。
会社法355条は取締役に対し、法令・定款・株主総会決議を遵守し会社のため忠実に職務を行うべき「忠実義務」を定めていますが(会社法355条)、判例(最大判昭和45年6月24日、いわゆる八幡製鉄事件)は、忠実義務は善管注意義務を敷衍し一層明確にしたものにとどまり、通常の委任における善管注意義務とは別個の高度な義務を課したものではないとする立場(同質説)を採っており、実務上もこの理解が定着しています。
取締役等がその任務を怠り(任務懈怠)会社に損害を生じさせた場合、会社に対して損害賠償責任を負います(会社法423条1項)。また、職務執行につき悪意または重大な過失があったときは、第三者に対しても損害賠償責任を負う場合があります(会社法429条1項)。
※個別の取引・事案における善管注意義務違反の有無は、事実関係や意思決定の過程によって異なります。具体的な対応については弁護士等の専門家にご確認ください。
M&Aの実行局面(買収の可否、買収価格、スキームの決定等)では、取締役の経営判断が結果として会社に損失をもたらす場合があり、善管注意義務違反の有無が問題となることがあります。もっとも、こうした経営上の裁量が認められる判断については、判例上、結果のみから責任を判断するのではなく、意思決定の前提となる事実認識の過程に不注意な誤りがなかったか、また意思決定の過程・内容が著しく不合理でなかったかなどを基準として善管注意義務違反の有無を判断する、いわゆる「経営判断の原則」の考え方が採られています。
そのため実務上は、財務・法務デューデリジェンスの実施、専門家の意見聴取、取締役会における審議・議事録の作成といった意思決定プロセスを適切に踏み、その記録を残しておくことが、後日の善管注意義務違反の主張に対する重要な備えとなります。取締役会の承認を経た買収が結果的に期待した成果を上げなかったとしても、そのことのみをもって直ちに担当役員の善管注意義務違反とされるわけではありません。
