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M&A用語解説
簿価引継法(ぼかひきつぎほう)
簿価引継法とは、企業結合などにおいて、移転される資産及び負債を時価に評価替えせず、移転直前の適正な帳簿価額で引き継ぐ会計処理を指す語である。ただし、これは企業会計基準の正式名称ではなく、本用語集が便宜上用いる呼称である。企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」及び第7号「事業分離等に関する会計基準」の本文は、この処理を「適正な帳簿価額により計上する」などと表現し、「簿価引継法」の名称は用いていない。
企業会計基準第21号は、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合を「共通支配下の取引」とし、親会社と子会社の合併や子会社同士の合併がこれに含まれるとしている。共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、個別財務諸表上、原則として移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上し、その差額は純資産として処理する(企業会計基準委員会「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号、2019年1月16日最終改正・2026年1月9日修正反映)(PDF)、第16項、5頁;第41項・第42項、10–11頁)。
ただし、親会社と子会社が企業結合する場合に、子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、親会社の個別財務諸表では、連結上の修正後の帳簿価額(のれんを含む)により計上する。また、子会社が法律上消滅する場合には、その子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額と増加資本との差額は親会社の損益とする(企業結合に関する会計基準第41項注9、第42項注10、11頁)。
共同支配企業の形成は、複数の独立した企業が契約等に基づき、共同で支配される企業を形成する企業結合をいう。この場合も、共同支配企業は、共同支配投資企業から移転される資産及び負債を、移転直前に共同支配投資企業で付されていた適正な帳簿価額により計上する(企業結合に関する会計基準第11項、4頁;第38項、10頁)。
事業分離は、ある企業を構成する事業を他の企業に移転することをいい、企業会計基準第7号は、事業を移転する分離元企業の会計処理を定める。移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には移転損益を認識するのに対し、投資がそのまま継続しているとみる場合には移転損益を認識せず、受け取る資産の取得原価を移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する(企業会計基準委員会「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号、2013年9月13日最終改正・2026年1月9日修正反映)(PDF)、第4項、4頁;第10項、5頁)。
これらは、取得の会計処理であるパーチェス法とは異なる。共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合は取得とされ、取得では、取得原価を時価を基礎として配分し、配分された純額を上回る超過額をのれんとして処理する(企業結合に関する会計基準第17項、5頁;第28項、8頁;第31項、8頁)。
※会計処理は、個別の取引や適用する会計基準によって異なります。個別の取引については、公認会計士・税理士等の専門家にご確認ください。
グループ内の再編(合併や会社分割など)が共通支配下の取引に当たる場合は、取得の場合と異なり、時価を基礎とする新たなのれんを生じさせずに、原則として帳簿価額で資産及び負債を引き継ぐ処理となる。一方、その取引が取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引、投資が継続する事業分離のいずれに当たるかで会計処理が変わり、財務諸表への影響も異なる。再編スキームを検討する早い段階で、公認会計士等の専門家に確認しておくことが重要となる。
