簿外債務(ぼがいさいむ)👁 閲覧数:287回

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M&A用語解説

簿外債務(ぼがいさいむ/Off-balance-sheet Liabilities)

簿外債務とは、貸借対照表(B/S)に負債として計上されていない債務をいいます。会計処理の遅れや漏れ、経営者による意図的な隠蔽などによる本来計上すべき債務の計上漏れのほか、M&A実務では、引当金の計上要件を満たさないため貸借対照表に計上されていない保証債務や係争事件に係る賠償義務などの偶発債務を含め、財務諸表からは把握しにくい潜在的な負担を広く指して用いられることもあります。

具体例としては、未払残業代(未払賃金債務)、退職給付引当金の計上不足、第三者の借入れ等に対する保証債務(連帯保証・物上保証)、会計基準上計上すべきリース債務の未計上、訴訟に伴う損害賠償義務、簿外の借入金などが挙げられます。将来の一定の事由の発生によって企業の負担となる可能性がある偶発債務には、債務保証や係争事件に係る損害賠償義務などがあり、重要なものについては財務諸表への注記が求められます(例:財務諸表等規則58条)。もっとも、将来の特定の費用または損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ金額を合理的に見積ることができる場合には、注記にとどまらず引当金として計上することが必要です(企業会計原則注解18)。M&A実務では、こうした本来必要な計上・注記の漏れも含め、財務諸表からは把握しにくい潜在的な負担を広く「簿外債務」として確認することが重要です。

なぜM&Aで重要か

簿外債務は決算書や貸借対照表を確認するだけでは十分に把握できないことがあるため、財務デューデリジェンスや法務デューデリジェンスを通じて実態を把握することが不可欠です。特に中小企業のM&Aでは、未払残業代や退職給付引当金の計上不足など、日常的な会計実務の中で簿外化しやすい項目が多く、買収価格の算定や表明保証条項の設計に直接影響します。

株式譲渡の場合、対象会社の法人格や権利義務関係はそのまま存続し、買主は対象会社の株式を取得することになるため、発見されなかった簿外債務は対象会社に残存したまま、株式価値の毀損というかたちで買主がそのリスクを実質的に負うことになります。これに対し事業譲渡の場合、譲渡対象となる資産・負債を個別に特定して承継できるため、指定していない簿外債務は原則として承継されません。もっとも、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、譲渡会社の事業によって生じた債務について譲受会社も弁済する責任を負う(会社法22条1項)など、例外的に簿外債務のリスクを負うケースがあるため注意が必要です。なお、事業を譲り受けた後遅滞なく、譲受会社が本店所在地で責任を負わない旨を登記した場合にはこの責任は生じず、譲受会社および譲渡会社から第三者にその旨を通知した場合には、通知を受けた第三者との関係でこの責任は生じません(同条2項)。

実務上は、デューデリジェンスで発見された簿外債務のリスクを、買収価格や価格調整条項に反映するとともに、株式譲渡契約(SPA)における表明保証条項・補償条項等によりリスクを当事者間で配分し、買主側のリスクを軽減する対応がとられます。

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2019年8月29日 | 最終更新日: 2026年10月16日
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