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M&A用語解説
買収防衛策(ばいしゅうぼうえいさく)
買収防衛策とは、敵対的買収(対象会社の取締役会の賛同を得ない買収)に対し、企業価値ひいては株主共同の利益を確保することなどを目的として、対象会社があらかじめ導入し、または買収提案を受けた段階で講じる方策の総称です。平時にあらかじめ導入しておく「予防策」(例:黄金株の発行等)と、実際に買収が仕掛けられた後に発動する「対抗策」(例:新株予約権無償割当て)に大別されます。
対抗策として用いられる代表的な手法が新株予約権無償割当てです。株式会社は株主に対して新たに払込みをさせずに新株予約権を割り当てることができ(会社法277条)、買収者を含む株主に新株予約権を割り当てた上で、一定の買収者について新株予約権の行使を制限したり、取得条項の内容に差異を設けたりすることにより、買収者の持株比率を実質的に低下させる効果を持たせることがあります。
経済産業省は、2023年(令和5年)策定の経済産業省「企業買収における行動指針」において、従来「買収防衛策」と呼ばれてきた措置について、あらかじめ定める「買収への対応方針」と、それに基づき実際に講じる「対抗措置」という用語で整理しています。同指針は、対抗措置の発動は、株主平等の原則、財産権の保護、経営陣の保身のための濫用防止等に配慮し、必要かつ相当な方法によるべきであるとしています。本用語集では、実務上定着した「買収防衛策」の表記を用いています。
買収防衛策の適法性は、判例上、株主平等原則(会社法109条1項)の趣旨や、新株予約権発行の差止事由である法令・定款違反、著しく不公正な方法による発行(同法247条)との関係で問題となります。最高裁判所は、株主平等原則の趣旨が新株予約権無償割当てにも及ぶとした上で、特定の株主による経営支配権の取得に伴い会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害される場合には、その防止のための差別的取扱いは、衡平の理念に反し相当性を欠くものでない限り、直ちに同原則の趣旨に反するものではないとしました。そのうえで、株主総会で大多数の賛成を得たことに加え、買収者側にも新株予約権の価値に見合う金銭が交付される設計であったことなどを踏まえ、当該新株予約権無償割当ては株主平等原則の趣旨に反せず、会社法247条1号・2号の差止事由にも該当しないと判断しました(いわゆるブルドックソース事件、最高裁平成19年8月7日決定)。
※買収防衛策の適法性・相当性は個別の事案の事実関係によって判断が分かれるため、導入や発動の可否については弁護士等の専門家にご確認ください。
買収防衛策の導入・発動は、既存株主の利益や資本市場からの評価に影響を及ぼし得るため、対象会社にとっても慎重な検討を要する経営判断です。株主総会の承認を得るなど手続の公正性を確保するとともに、必要性・相当性や株主への情報開示を確保し、専ら経営陣の保身を目的とするものでないことを説明できるようにしておくことが重要です。なお、株主総会の承認のみをもって適法性・相当性が当然に認められるものではありません。
一方、買収者・投資家の立場からは、投資対象企業が買収防衛策(買収への対応方針・対抗措置)を導入しているか、導入している場合にその発動条件はどのようなものかをあらかじめ把握しておくことが、M&A戦略の検討やリスク評価において重要になります。
