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M&A用語解説

営業権(えいぎょうけん)

M&Aや会計実務において営業権と呼ばれてきたものは、一般に、他の企業より多く収益を稼得することができる無形の源泉・原因(企業のブランド力、高度な技術力、営業上のノウハウ(仕組み)、取引関係、立地条件等の地理的条件など)を金額で評価したもの(無形の財産的価値を有するもの)をいいます。かつては会計上の勘定科目としても用いられていましたが、2006年の会社法施行に伴い、会社計算規則などでは「のれん(暖簾)」という用語が用いられるようになりました。また法人税法上は、繊維工業における織機の登録権利、許可漁業の出漁権、タクシー業のいわゆるナンバー権のように、法令の規定や行政官庁の指導等による規制に基づく登録・認可・許可・割当て等の権利を取得するために支出する費用も、営業権に該当するものとされています(法人税基本通達7-1-5)。

日本の企業会計基準では、「取得」とされる企業結合(営業譲渡(事業譲渡)や合併・買収など)において、取得原価を受け入れた識別可能な資産・負債の時価を基礎として配分し、取得原価がその配分された純額を上回る場合に、その超過額が「のれん」として貸借対照表上の無形固定資産に計上されます。自社が内部で形成した自己創設のれんを資産として計上することはできません。現在の企業会計では一般に「のれん」という名称が用いられる一方、法人税法では「営業権」という用語も用いられており、会計上ののれんと税務上の営業権は、必ずしも制度上同一のものではありません。

会計上ののれんは、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、生じた事業年度の費用として処理することができます(企業結合に関する会計基準第32項)。一方、税務上は取引形態によって取扱いが異なり、非適格合併のほか、一定の非適格分割・非適格現物出資や、事業およびその事業に係る主要な資産または負債のおおむね全部が移転する一定の事業の譲受けでは、法人税法62条の8に基づく「資産調整勘定」が生じることがあります(同施行令123条の10)。他方、株式譲渡の場合は、買い手が対象会社の株式を取得する形であり、対象会社の資産・負債を直接移転するものではないため、株式取得そのものによって資産調整勘定は生じません。ただし、株式取得により対象会社を子会社とした場合には、買い手の連結財務諸表上、会計上ののれんが計上されることがあります。

※個別の取引については税理士等の専門家にご確認ください。

なぜM&Aで重要か

営業権に相当する無形の収益力は、M&Aの譲渡価格を検討する際の重要な要素となります。買収側は、対象企業の純資産(資産から負債を引いた金額)だけでなく、ブランド力や顧客基盤、技術力といった無形の価値も踏まえて譲渡価格を検討します。これらのうち、法律上の権利など個別に識別できるものは無形資産として配分され、取得原価が識別可能な資産・負債に配分された純額を上回る部分が、会計上ののれんとして計上されます。

たとえば、事業譲渡によって事業を取得するケースで、取得原価が1億円、受け入れた識別可能な資産・負債に配分された時価の純額が8,000万円であった場合、他に取得原価を配分すべき識別可能な資産・負債等がなければ、その超過額の2,000万円が会計上ののれんとして計上されます。なお、税務上の資産調整勘定の金額がこれと一致するとは限りません。

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監修者情報
監修者 佐藤信(IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役)
監修

佐藤 信(さとう あきお)

M&A・事業承継の専門家|IRI M&Aコンサルティング株式会社

IRI M&Aコンサルティング株式会社 取締役。M&A・事業承継に関する実務経験をもとに、中小企業の譲渡・譲受、事業承継、企業価値評価などの支援に従事。本サイトでは、専門用語を初めて学ぶ方にも理解しやすい表現を心掛け、実務で活用できる情報の監修を担当しています。

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2016年10月6日 | 最終更新日: 2026年10月16日
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