デイサービス(通所介護)は、介護ビジネスの中でも比較的参入しやすく、地域密着型で安定した需要があることから、M&A市場でも一定数の案件が流通しています。
一方で、「施設要件」「人員基準」「稼働率」に強く依存するビジネスであり、訪問介護とは異なるリスク構造を持ちます。
本記事では、デイサービスM&Aの全体像を、実務目線で整理します。
デイサービスとは(ビジネスの本質)
デイサービスとは、利用者が日中施設に通い、食事・入浴・機能訓練などのサービスを受ける事業です。
制度上は介護保険法第8条第7項に定義されており、介護保険報酬によって収益が発生します。

訪問介護との違いは明確で、
👉 「施設 × 稼働率 × 人員」=売上
という“箱ビジネス”である点が特徴です。
許認可の基本構造
デイサービスを運営するには、介護保険事業者の指定が必要です。
根拠
- 介護保険法第41条
- (小規模の場合)介護保険法第42条
この指定が維持できるかが、M&Aの成否を左右します。
M&Aスキームと許認可
株式譲渡
👉 指定はそのまま維持
- 最も一般的な手法
- 利用者・売上が途切れない
事業譲渡
👉 原則再指定が必要
- 新規申請に数ヶ月かかる
- その間は売上が停止する
結論
👉 デイサービスも株式譲渡が基本
デイサービス特有のリスク
訪問介護と比較すると、デイサービスには以下の特徴があります。
① 稼働率依存
👉 売上は利用者数で決まる
- 定員に対する稼働率が重要
- 空きがあると即減収になる
② 不動産リスク
👉 建物が適法でないと致命的
確認すべきポイント
- 用途地域(建築基準法第48条)
- 消防設備(消防法第17条)
③ 人員配置
- 管理者
- 生活相談員
- 機能訓練指導員
👉 欠けると運営不可

価格評価の考え方
デイサービスは訪問介護と異なり、“施設型ビジネス”として評価されます。
主な評価指標
- 利用者数
- 稼働率
- 定員
- 人員体制
譲渡価格の目安イメージ
小規模デイ(よくあるパターン)
- 年商:2,000〜4,000万円
- 利益:不安定
👉 売上の0.3〜1倍
優良デイ(稼働率が高いケース)
- 稼働率80%以上
- 利益安定
👉 利益の3〜5倍
デューデリジェンスのポイント
① 稼働率の確認
- 定員に対する利用者数
- 曜日別の偏り
👉 週の穴があると要注意
② 建物の適法性
- 用途変更済みか
- 消防検査済みか
👉 ここがNGだと再指定不可
③ 人員体制
- 常勤要件を満たしているか
- 有資格者が揃っているか
④ 行政リスク
- 指導履歴
- 不正請求の有無
根拠
- 介護保険法第70条

デューデリジェンスとは、企業の財務・法務リスクを調査する工程です。
→ デューデリジェンスの流れを見る
よくある失敗
① 稼働率を見誤る
👉 表面上の売上だけで判断する
② 建物違反を見落とす
👉 許認可が取れなくなる
③ スタッフ流出
👉 運営が崩壊する
成功するM&Aのポイント
① 稼働率改善余地を見る
👉 伸びしろが重要
② 送迎エリアの分析
👉 商圏で勝負が決まる
③ スタッフの定着
👉 現場力がすべて
まとめ

デイサービスM&Aの本質はシンプルです。
- 👉 稼働率がすべて
- 👉 建物が土台
- 👉 人材が運営力
訪問介護が「人のビジネス」だとすると、
デイサービスは「箱+人のビジネス」です。
したがって結論は、
👉 「稼働率が維持できるか」を中心に判断すべきです。
デイサービスは改善余地のある案件も多く、適切に選べば非常に魅力的な投資対象となります。
一方で、基礎構造を見誤ると収益は一気に崩れるため、慎重な見極めが不可欠です。