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警備会社のM&A完全ガイド|売却価格の考え方・警備業法上の手続・事業承継・高く売るポイント

佐藤 信

監修:佐藤 信|アイアールアイM&Aコンサルティング株式会社 取締役
最終更新日:2026年9月2日

警備会社のM&A完全ガイド

📋 この記事でわかること

  • 警備会社の売却価格を考える際の基本式と、価格を左右する実務要因
  • 株式譲渡と事業譲渡で異なる警備業認定・契約・雇用の扱い
  • 警備員指導教育責任者、有資格者、教育記録、労務管理の確認ポイント
  • 買い手候補、高く評価されやすい会社の特徴、準備資料とM&Aの流れ
📝 この記事のまとめ
  • 警備会社の売却価格に一律の相場はなく、時価純資産や正常収益力を基礎に、稼働警備員・有資格者・継続契約・顧客分散・労務教育記録・認定届出の状態を総合評価する
  • 株式譲渡は法人が存続し役員変更届等を確認、事業譲渡は買い手が別途認定・体制を整える必要がある
  • 調整後EBITDA×倍率だけで断定せず、時価純資産・DCF等も踏まえて個別に判断する
  • 赤字でも稼働人員・有資格者・優良契約・拠点に価値があれば譲渡可能性がある
  • 売却を決めていない段階でも、資料整理と自社の強み・課題の把握が第一歩になる

結論|警備会社の価値は「利益」だけでなく、人・契約・法令対応にも左右される

結論:警備会社の売却価格に一律の相場はありません。時価純資産や正常収益力を基礎に、稼働できる警備員、有資格者、継続契約、顧客分散、労務・教育記録、認定・届出の状態を総合評価します。

警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、2025年末(令和7年12月末)時点の警備業者は10,949業者、警備員は596,985人です。警備業者数・警備員数はいずれも前年より増加しています。一方、警備業では人材の採用・配置・教育が業務遂行能力に直結するため、M&Aでは「受注があるか」だけでなく「法令に沿って人を配置し、業務を継続できるか」が重要です。

警備会社のM&A価値は利益だけでなく人・契約・法令対応で決まる

1.警備業の4区分とM&Aで見るべき違い

結論:警備業務の区分や事業の実態によって、必要な人材・資格、設備、事故リスク、契約内容、想定される買い手など、M&Aで確認すべきポイントが異なります。

区分 主な業務 M&Aでの主な評価軸
1号 施設、巡回、保安、機械警備等 長期契約、現場責任者、機械警備設備、待機所・即応体制
2号 交通誘導、雑踏警備 稼働警備員、建設会社との関係、繁閑差、配置能力
3号 現金・貴金属等の運搬警備 車両・装備、事故管理、専門人材、取引先基準
4号 身辺警備 専門人材、教育水準、守秘・事故対応、属人性

交通誘導警備(2号業務)を行う警備員

2.警備会社のM&Aが選択肢になる理由

結論:後継者不在の解決だけでなく、買い手にとっては採用・教育・顧客開拓にかかる時間を短縮できる点がM&Aの戦略価値になります。

  • 売り手:従業員の雇用、顧客へのサービス、会社名や地域信用を残せる可能性がある
  • 買い手:稼働人員、有資格者、営業所、顧客契約、営業エリアを一体で取得できる可能性がある
  • 双方:単なる資産売買ではなく、業務継続に必要な組織と関係性を承継できる

警備会社のM&Aが選択肢になる理由

3.警備会社はいくらで売れるのか

結論:売却価格は、①時価純資産、②正常収益力、③買い手が得る相乗効果、④引き継ぐリスクを組み合わせて個別に判断します。特定倍率を警備業界共通の相場として断定することはできません。

計算例(相場の断定ではありません):営業利益2,000万円、減価償却費300万円なら、単純計算のEBITDAは2,300万円です。ただし、役員報酬、臨時費用、設備投資、運転資金、負債、顧客集中、有資格者の残留などを調整しなければ、売却価格にはなりません。

方法 考え方 注意点
時価純資産+のれん 資産・負債を時価に直し、超過収益力を加える 簿外債務、退職給付、未払残業、不要資産を調整
調整後EBITDA × 倍率 役員報酬や一時費用等を調整した収益力に倍率を掛ける 倍率は規模、成長性、顧客集中、人材、リスク、買い手競争で変動
DCF等 将来キャッシュフローを現在価値に割り引く 事業計画と割引率の前提に大きく左右される

警備会社の売却価格を分析する資料

4.価格を左右する8つのポイント

稼働できる警備員:在籍数ではなく、現場に配置可能な人数、雇用形態、年齢、勤続年数、稼働率、欠員率まで確認します。

有資格者と責任者:営業所・区分ごとの警備員指導教育責任者、検定合格警備員等がM&A後も残るかを確認します。

顧客契約:契約期間、更新、解約、再委託、価格改定、支配権変更時の条項を整理します。

顧客分散:最大顧客や上位顧客への依存が高いと、契約喪失時の影響が大きくなります。

案件別採算:売上だけでなく、賃金、法定福利費、採用・教育費、交通費、外注費を現場別に把握します。

教育・法令対応:教育計画、実施記録、備付書類、変更届、標識、行政指導等の履歴を確認します。

経営者依存:営業・採用・配員・顧客対応を社長一人に依存していると引継ぎリスクが高まります。

地域とシナジー:隣接地域への進出、ビルメンテナンスとの一体提案、既存拠点との人員融通は戦略価値になり得ます。

価格を左右するポイントとなる警備員の人材力

5.警備業の認定はM&Aでどうなるか

結論:警備業を営む主体が誰かで手続が変わります。株式譲渡では法人自体は存続しますが、役員等の変更届や欠格事由の確認が必要になり得ます。事業譲渡では買い手法人が別主体であるため、買い手自身が警備業を営める認定・体制を整えないまま営業を開始できません。

重要:最終判断は、取引スキーム、営業所、警備業務区分、役員構成、地域によって異なります。基本合意前から、主たる営業所を管轄する警察署、都道府県公安委員会、弁護士等へ確認してください。

補足:2024年(令和6年)4月1日施行の警備業法改正により、紙の「認定証」の交付は廃止され、警備業者は認定を受けたことを示す「標識」(認定をした公安委員会、認定の番号、有効期間、氏名又は名称、主たる営業所の所在地を記載)を主たる営業所の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイトにも掲載する必要があります(事業規模が著しく小さい場合等を除く)。M&Aに伴い法人名や主たる営業所の所在地が変わる場合は、この標識の記載内容も更新が必要です。

論点 株式譲渡 事業譲渡
法人 対象会社は存続し、株主が変わる 事業・資産・契約を買い手へ個別承継
警備業認定 同一法人の認定は直ちに別法人へ移る話ではない。ただし役員等の変更・欠格事由・届出を確認 認定を他法人へ単純移転できるとは扱わない。買い手側の認定と開始時期を事前設計
従業員 雇用主は原則同じ法人 労働契約は当然には承継されず、承継には原則として従業員本人の個別承諾が必要
顧客契約 契約条項により継続しやすいが、支配権変更条項等を確認 契約相手の同意・再契約等が必要になり得る
主なリスク 簿外債務・過去の労務・行政対応も法人に残る 承継漏れ、認定取得前の営業、契約・人材の移行不成立

※法令・届出の解釈は個別事情で異なります。出典:e-Gov法令検索「警備業法」、警察庁「警備業法等の解釈運用基準について」。

6.デューデリジェンスで確認される事項

結論:警備会社では財務・法務に加え、人事労務、警備業法対応、教育、事故・苦情、契約の継続可能性が重点項目です。

分野 主な資料・確認事項
財務 3期分決算書、月次試算表、借入、役員報酬、一時費用、現預金、未払費用
売上・契約 顧客別・区分別売上、契約書、契約期間、粗利、解約条項、再委託
人員 警備員名簿、雇用形態、年齢、勤続、資格、給与、配置、退職予定
労務 勤怠、残業代、36協定、最低賃金、社会保険、有休、就業規則
警備業法 認定、更新、変更届、営業所・区分、責任者、教育計画・実施記録、備付書類
事故等 事故、苦情、損害賠償、保険、行政指導・処分、訴訟・紛争

7.高く評価されやすい警備会社の特徴

結論:安定黒字と正常収益力の説明力、人材の分散、契約基盤、法令対応の整備、経営者依存の低さが評価を左右します。

  • 安定黒字で、役員報酬等を調整した正常収益力を説明できる
  • 稼働警備員と有資格者が複数おり、特定人物への依存が低い
  • 顧客が分散し、継続契約と案件別採算を資料で示せる
  • 法定教育、勤怠、労務、届出、事故対応の記録が整っている
  • 社長が退任しても営業・採用・配員・顧客対応を継続できる
  • 主要人材の残留条件と引継ぎ計画を早期に設計している

教育・研修体制が整った警備会社は高く評価されやすい

8.赤字でも売却できるか

結論:赤字でも、受注余力、稼働人員、有資格者、優良顧客、拠点、買い手との相乗効果に価値があれば譲渡可能性はあります。ただし赤字理由と改善可能性を数値で説明する必要があります。

  • 採用費や一時費用による一過性赤字か
  • 不採算契約や価格転嫁不足による構造赤字か
  • 本部統合や人員融通で固定費を減らせるか
  • 未払債務や行政・労務リスクを差し引いても買収合理性があるか

9.想定される買い手

結論:買い手候補は業種名だけで決めず、対象会社の警備区分、営業地域、顧客構成、人員の相互補完性を基準に選びます。

  • 同業の警備会社:隣接地域への進出、人員・顧客・営業所の獲得
  • ビルメンテナンス・総合施設管理会社:設備管理、清掃、警備の一体提供
  • 建設・人材関連会社:交通誘導人員や採用・配員機能との連携
  • 不動産・建物管理会社:管理物件へのサービス拡張

警備会社のM&Aで想定される買い手企業

10.売却前に準備する資料

結論:認定・届出、営業所・区分、責任者・資格者、顧客別売上、警備員名簿を最優先に、財務・契約・人事労務・コンプライアンス資料を段階的に整えます。

優先度 準備するもの
最優先 認定・更新・変更届、営業所と警備区分、責任者・資格者一覧、顧客別売上、警備員名簿
財務 3期分決算書、直近月次、借入一覧、役員報酬、非経常・一時費用、案件別採算
契約 主要顧客・外注・賃貸借・リース・保険契約、支配権変更・譲渡制限条項
人事労務 雇用契約、就業規則、賃金台帳、勤怠、有休、社会保険、退職金、36協定
コンプライアンス 教育計画・記録、備付書類、事故・苦情・行政対応・訴訟履歴

警備会社の売却前に準備する契約書類

11.警備会社M&Aの流れ

結論:初期相談から最終契約・クロージングまで、警備業法・人員・契約の精査を織り込みながら段階的に進めます。

段階 工程 警備会社での要点
1 初期相談・秘密保持 目的、希望条件、非公開範囲を確認
2 簡易評価・資料整備 正常収益力、人員、認定、契約、リスクを整理
3 買い手探索 同業・周辺業種からシナジーのある候補を選定
4 意向表明・基本合意 価格、スキーム、主要人材、独占交渉等を合意
5 デューデリジェンス 財務・法務・労務・警備業法・契約を精査
6 最終契約 前提条件、補償、雇用・契約・認定対応を明記
7 クロージング・引継ぎ 対価決済、株式・事業移転、届出、説明、PMIを実施

警備会社M&Aの一般的な流れ

12.従業員・取引先へ伝えるタイミング

結論:早すぎる開示は退職や契約不安につながる一方、遅すぎる説明は信頼を損ないます。必要な法的手続と本人同意を踏まえ、開示対象、順番、説明者、雇用条件、問い合わせ対応を計画します。

警備会社では人材そのものが事業承継の継続性に直結します。特に責任者、有資格者、隊長、配員担当、主要顧客担当者については、情報管理と残留条件を個別に設計します。

従業員・取引先へ伝えるタイミングを見極める警備会社

まとめ|廃業を決める前に、人・契約・認定を含む事業価値を確認する

警備会社の価値は、決算書に表れる利益や純資産だけではありません。稼働警備員、有資格者、教育体制、顧客契約、営業エリア、地域の信用は、長年かけて築いた事業資産です。

一方、認定・届出、労務、教育記録、契約承継に問題があると、価格調整や取引中止につながり得ます。売却を決めていない段階でも、資料を整理し、株式譲渡と事業譲渡の違いを確認し、自社の強みと課題を把握することが第一歩です。

アイアールアイM&Aコンサルティングでは、M&A仲介、事業承継、会社売却に関する相談に対応しています。会社所在地、警備業務区分、警備員・有資格者数、主要顧客、直近の売上・利益をご準備いただくと、初期相談を進めやすくなります。

よくある質問

Q

警備会社の売却相場は何倍ですか?

A一律の倍率はありません。時価純資産、調整後利益・EBITDA、人員、有資格者、顧客契約、成長性、リスク、買い手の相乗効果で変わります。倍率だけでなく計算前提を確認してください。
Q

警備業の認定は株式譲渡で引き継げますか?

A株式譲渡では警備業者である法人自体が存続するため、株式譲渡のみを理由として新たな認定を取得する必要はありません。ただし役員等に変更が生じる場合は、警備業法第11条に基づく届出義務として、警備業法施行規則が定める期限(変更の日から原則10日以内、登記事項証明書を添付すべき場合は20日以内)までに、主たる営業所の所在地を管轄する警察署を経由して公安委員会へ変更届出書を提出する必要があります。新役員に欠格事由があると認定取消し(警備業法第8条)につながり得るため、事前確認が必要です。個別の期限・様式は所轄警察署等へ事前にご確認ください。
Q

事業譲渡なら認定も移せますか?

A認定を別法人へ単純に移せるとは扱えません。買い手が営業開始時点で必要な認定と体制を備えるよう、スケジュールを設計します。
Q

赤字でも売れますか?

A可能性はあります。稼働人員、有資格者、優良契約、拠点などに戦略価値があり、赤字原因を改善できると買い手が判断する場合です。
Q

警備員にはいつ説明しますか?

A案件ごとに異なります。機密保持、雇用承継、退職リスクを踏まえ、買い手・条件が固まった段階で説明計画を作るのが一般的です。
Q

相談前に最低限必要な資料は?

A直近3期の決算書、直近月次、警備員・資格者一覧、顧客別売上、認定・届出関係資料があると初期評価を進めやすくなります。

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👤 監修者

佐藤 信(さとう あきお)

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2026.09.02 更新

投稿者: IRI M&Aコンサルティング編集部 | 2026年9月2日