① 借入の完全把握(必須)
まず最初に行うべきは、借入内容の正確な把握です。ここが曖昧なまま進めると、後工程で必ず問題が発生します。
補足(実務ポイント)
実務では、単なる残高一覧では不十分で、「保証構造の見える化」が必要になります。具体的には、金融機関ごとに以下を整理します。
- 借入金額・残高
- 保証人(誰が保証しているか)
- 担保(不動産・預金など)
- 返済条件(期間・金利)
特に重要なのは、「どの借入に誰の保証が付いているか」です。
これを整理することで、「どの借入が交渉対象になるか」が明確になります。

② 初期段階で銀行に相談(最重要)
借入整理ができたら、できるだけ早い段階で銀行へ相談を行います。
補足(実務ポイント)
ここでの最大の注意点は、「タイミング」です。
- NG:最終契約後に相談
- OK:基本合意前〜直後
銀行が承認しなければM&Aは成立しないため、
👉**“銀行がどう考えるか”を先に確認することが重要**です。
また、相談時には単に「売却予定」と伝えるのではなく、
- なぜ売却するのか
- なぜこの買い手なのか
- 事業はどうなるのか
を説明し、「合理的な取引」であることを理解してもらう必要があります。

③ 買い手情報の提示(信用審査フェーズ)
銀行との初期協議が進んだら、買い手の情報を提示します。
補足(実務ポイント)
このフェーズでは、銀行は実質的に「保証人の入れ替え審査」を行っています。
主に見られるポイントは以下です。
- 財務状況(純資産・利益・CF)
- 個人資産(不動産・預金)
- 経営経験・業界理解
- 過去の事業実績
ここで重要なのは、「数字」だけではなく、
👉**“この人に任せて大丈夫か”という定性的評価**です。
そのため、事業計画や引き継ぎ体制も含めて説明することが有効です。
④ 条件交渉(実質的な勝負)
買い手審査と並行して、銀行との条件交渉に入ります。
補足(実務ポイント)
ここでは単に保証の有無だけでなく、以下の条件が調整されます。
- 保証解除 or 保証人変更
- 担保の継続・解除・差替
- 金利条件
- コベナンツ(財務制限条項)
実務上は、
👉「完全解除」
👉「一部残存」
👉「買い手保証へ切替」
のどれになるかが争点になります。
重要なのは、
👉売り手のリスクがどこまで残るかを明確にすることです。+-
⑤ 最終契約(条件付きが基本)
条件交渉がまとまったら、最終契約(株式譲渡契約等)を締結します。
補足(実務ポイント)
ここで必ず入れるべきなのが、
👉**「保証解除を前提条件(停止条件)」とする条項**
です。
これを入れない場合、
- 保証解除できない
- でも契約は有効
という最悪の状態になります。
実務では、
「金融機関の承諾および保証解除を条件とする」
という文言を入れるのが一般的です。
⑥ 銀行への書類提出(実務処理)
契約締結後、銀行へ正式な書類を提出します。
補足(実務ポイント)
ここで必要になる書類は以下です。
- 保証契約変更書類
- 新保証人の登録書類
- 担保関係書類
- 会社の変更資料(株主変更等)
この工程でよくある問題は、
- 書類不備
- 押印漏れ
- スケジュール遅延
です。
👉事前に銀行と必要書類をすり合わせることが重要です。

⑦ 譲渡実行(クロージング・決済)
最終的に、株式譲渡と資金決済を実行します。
補足(実務ポイント)
このタイミングでは、
- 株式譲渡
- 融資条件変更
- 保証切替
が同時に行われます。
👉これを「同時履行」といいます。
この順番が崩れると、
- 保証が外れない
- リスクだけ残る
という事態になるため、
👉銀行・当事者・アドバイザーの連携が不可欠です。
⑧ 保証人変更書類の締結(最終処理)
最後に、保証人変更書類の締結が行われます。

補足(実務ポイント)
ここで正式に、
- 売り手保証の解除
- 買い手保証の成立
が完了します。
実務上は、
👉「保証解除が完了したことを必ず書面で確認」
することが重要です。
口頭確認だけではリスクが残るため、
銀行からの正式な書類受領まで確認する必要があります。

■ まとめ(実務の本質)
このフローの本質は以下です。
👉銀行をどれだけ早く巻き込めるか
👉買い手の信用をどう見せるか
👉契約でリスクをコントロールできるか
👉この3点で、保証解除の成否はほぼ決まります。