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第19話 締結の先にあるもの

数字では動かなかった心が、ストーリーで動いた。——それが、この仕事の本質だった。

契約はゴールじゃない。
リスクを洗い出し、本当の価値をつくるのがM&Aの仕事だ。

本日はありがとうございました、このご縁を未来につないでいきますとついに譲渡契約を締結。長年の想いを託し未来への第一歩を踏み出した。やりました、ここまで来ましたよと主人公。お疲れ、だがここからが本番だと上司。契約はゴールじゃない、リスクを洗い出して本当の価値を作るのが我々の仕事だ。上司は冷静に釘を刺す。浮かれる主人公に、現実を突きつける一言だった。


契約書にサインした日が、本当の仕事の始まりだった。
M&Aは、締結の先にこそ価値がある。

デューデリジェンスがスタート。DDの主な項目として財務状況の確認・現金預金の照合・売上仕入の裏付け・労務給与の確認・税務申告の確認・契約書取引関係の確認・資産負債の確認・事業リスクの確認。順調に見えた案件だが資料の中に小さな違和感が。一部スタッフに対する残業代給与の未払いが発覚。従業員へのヒアリングでも不満が出ている。


デューデリジェンスは、事業承継の本当のリスクを照らし出す。
順調に見えた案件ほど、細部に落とし穴がある。

キーマンの退職届。一身上の都合により退職いたします、山口大輔。キーマンの退職が決まりさらに他のスタッフも辞めたいと言い出す。売上POSが4570万円、帳簿売上が3820万円、差額750万円。現金売上の一部が帳簿に計上されておらず抜き取りの疑い。また法人税等の未納も発覚。現金売上の抜き取りと未納税が発覚、案件は一気に危機的状況へ。


M&Aのリスクは、想定外のところから現れる。
誠実に向き合うか、隠すか——それで信頼が決まる。

これでは前提が違いすぎます、このままでは契約を進められませんと買い手は強い不信感を示し撤退の可能性を突きつける。上司と徹底的に整理。修正対応のポイントとして給与未払いの清算方法と金額を確定・退職者への対応と引き継ぎ体制の構築・抜き取り未納税の全額を確認し債権者等に反映・価格調整や分割支払いなど条件の再設計。リスクを見える化し条件に落とし込む。


問題を隠さず、すべてを開示する。
それが、M&Aで信頼を取り戻す唯一の方法だった。

すべての問題を正直に開示します、その上で具体的な対応策と条件をこちらにまとめました、ご検討ください。隠さず誠実にすべてを説明、信頼を取り戻すための勝負。正直に開示しっかり対応策を出してくれた、この条件なら前に進めますと買い手が納得。最終合意内容修正版として価格調整・未払い清算の実施・雇用継続保証・税務不正に関する補償条項・支払条件の見直しで合意。やり切った、本当の意味で繋げることができたとM&Aクロージング完了。すべての条件で合意、ついにクロージング、ここから新しい未来が始まる。


隠さず、逃げず、すべてを開示した。
M&Aクロージングは、
誠実さの先にしかなかった。

次回 第20話「見えていなかった現実」
随時更新

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「マンガで知るM&A仲介会社の日常」

この話の登場人物

佐藤恒一

佐藤 恒一
主人公・27歳
元エンジニア
→ M&A仲介営業

黒木 隆司

黒木 隆司
上司・45歳・部署マネージャー

全員のプロフィール・人物関係は
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By | 2026年6月3日