
📋 この記事でわかること
- 警備会社の売却価格を考える際の基本式と、価格を左右する実務要因
- 株式譲渡と事業譲渡で異なる警備業認定・契約・雇用の扱い
- 警備員指導教育責任者、有資格者、教育記録、労務管理の確認ポイント
- 買い手候補、高く評価されやすい会社の特徴、準備資料とM&Aの流れ
目次
- 1 結論|警備会社の価値は「利益」だけでなく、人・契約・法令対応にも左右される
- 2 1.警備業の4区分とM&Aで見るべき違い
- 3 2.警備会社のM&Aが選択肢になる理由
- 4 3.警備会社はいくらで売れるのか
- 5 4.価格を左右する8つのポイント
- 6 5.警備業の認定はM&Aでどうなるか
- 7 6.デューデリジェンスで確認される事項
- 8 7.高く評価されやすい警備会社の特徴
- 9 8.赤字でも売却できるか
- 10 9.想定される買い手
- 11 10.売却前に準備する資料
- 12 11.警備会社M&Aの流れ
- 13 12.従業員・取引先へ伝えるタイミング
- 14 まとめ|廃業を決める前に、人・契約・認定を含む事業価値を確認する
- 15 よくある質問
- 16 関連記事
結論|警備会社の価値は「利益」だけでなく、人・契約・法令対応にも左右される
結論:警備会社の売却価格に一律の相場はありません。時価純資産や正常収益力を基礎に、稼働できる警備員、有資格者、継続契約、顧客分散、労務・教育記録、認定・届出の状態を総合評価します。
警察庁「令和7年における警備業の概況」によると、2025年末(令和7年12月末)時点の警備業者は10,949業者、警備員は596,985人です。警備業者数・警備員数はいずれも前年より増加しています。一方、警備業では人材の採用・配置・教育が業務遂行能力に直結するため、M&Aでは「受注があるか」だけでなく「法令に沿って人を配置し、業務を継続できるか」が重要です。

1.警備業の4区分とM&Aで見るべき違い
結論:警備業務の区分や事業の実態によって、必要な人材・資格、設備、事故リスク、契約内容、想定される買い手など、M&Aで確認すべきポイントが異なります。
| 区分 | 主な業務 | M&Aでの主な評価軸 |
|---|---|---|
| 1号 | 施設、巡回、保安、機械警備等 | 長期契約、現場責任者、機械警備設備、待機所・即応体制 |
| 2号 | 交通誘導、雑踏警備 | 稼働警備員、建設会社との関係、繁閑差、配置能力 |
| 3号 | 現金・貴金属等の運搬警備 | 車両・装備、事故管理、専門人材、取引先基準 |
| 4号 | 身辺警備 | 専門人材、教育水準、守秘・事故対応、属人性 |

2.警備会社のM&Aが選択肢になる理由
結論:後継者不在の解決だけでなく、買い手にとっては採用・教育・顧客開拓にかかる時間を短縮できる点がM&Aの戦略価値になります。
- 売り手:従業員の雇用、顧客へのサービス、会社名や地域信用を残せる可能性がある
- 買い手:稼働人員、有資格者、営業所、顧客契約、営業エリアを一体で取得できる可能性がある
- 双方:単なる資産売買ではなく、業務継続に必要な組織と関係性を承継できる

3.警備会社はいくらで売れるのか
結論:売却価格は、①時価純資産、②正常収益力、③買い手が得る相乗効果、④引き継ぐリスクを組み合わせて個別に判断します。特定倍率を警備業界共通の相場として断定することはできません。
計算例(相場の断定ではありません):営業利益2,000万円、減価償却費300万円なら、単純計算のEBITDAは2,300万円です。ただし、役員報酬、臨時費用、設備投資、運転資金、負債、顧客集中、有資格者の残留などを調整しなければ、売却価格にはなりません。
| 方法 | 考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 時価純資産+のれん | 資産・負債を時価に直し、超過収益力を加える | 簿外債務、退職給付、未払残業、不要資産を調整 |
| 調整後EBITDA × 倍率 | 役員報酬や一時費用等を調整した収益力に倍率を掛ける | 倍率は規模、成長性、顧客集中、人材、リスク、買い手競争で変動 |
| DCF等 | 将来キャッシュフローを現在価値に割り引く | 事業計画と割引率の前提に大きく左右される |

4.価格を左右する8つのポイント
稼働できる警備員:在籍数ではなく、現場に配置可能な人数、雇用形態、年齢、勤続年数、稼働率、欠員率まで確認します。
有資格者と責任者:営業所・区分ごとの警備員指導教育責任者、検定合格警備員等がM&A後も残るかを確認します。
顧客契約:契約期間、更新、解約、再委託、価格改定、支配権変更時の条項を整理します。
顧客分散:最大顧客や上位顧客への依存が高いと、契約喪失時の影響が大きくなります。
案件別採算:売上だけでなく、賃金、法定福利費、採用・教育費、交通費、外注費を現場別に把握します。
教育・法令対応:教育計画、実施記録、備付書類、変更届、標識、行政指導等の履歴を確認します。
経営者依存:営業・採用・配員・顧客対応を社長一人に依存していると引継ぎリスクが高まります。
地域とシナジー:隣接地域への進出、ビルメンテナンスとの一体提案、既存拠点との人員融通は戦略価値になり得ます。

5.警備業の認定はM&Aでどうなるか
結論:警備業を営む主体が誰かで手続が変わります。株式譲渡では法人自体は存続しますが、役員等の変更届や欠格事由の確認が必要になり得ます。事業譲渡では買い手法人が別主体であるため、買い手自身が警備業を営める認定・体制を整えないまま営業を開始できません。
重要:最終判断は、取引スキーム、営業所、警備業務区分、役員構成、地域によって異なります。基本合意前から、主たる営業所を管轄する警察署、都道府県公安委員会、弁護士等へ確認してください。
補足:2024年(令和6年)4月1日施行の警備業法改正により、紙の「認定証」の交付は廃止され、警備業者は認定を受けたことを示す「標識」(認定をした公安委員会、認定の番号、有効期間、氏名又は名称、主たる営業所の所在地を記載)を主たる営業所の見やすい場所に掲示するとともに、ウェブサイトにも掲載する必要があります(事業規模が著しく小さい場合等を除く)。M&Aに伴い法人名や主たる営業所の所在地が変わる場合は、この標識の記載内容も更新が必要です。
| 論点 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 法人 | 対象会社は存続し、株主が変わる | 事業・資産・契約を買い手へ個別承継 |
| 警備業認定 | 同一法人の認定は直ちに別法人へ移る話ではない。ただし役員等の変更・欠格事由・届出を確認 | 認定を他法人へ単純移転できるとは扱わない。買い手側の認定と開始時期を事前設計 |
| 従業員 | 雇用主は原則同じ法人 | 労働契約は当然には承継されず、承継には原則として従業員本人の個別承諾が必要 |
| 顧客契約 | 契約条項により継続しやすいが、支配権変更条項等を確認 | 契約相手の同意・再契約等が必要になり得る |
| 主なリスク | 簿外債務・過去の労務・行政対応も法人に残る | 承継漏れ、認定取得前の営業、契約・人材の移行不成立 |
※法令・届出の解釈は個別事情で異なります。出典:e-Gov法令検索「警備業法」、警察庁「警備業法等の解釈運用基準について」。
6.デューデリジェンスで確認される事項
結論:警備会社では財務・法務に加え、人事労務、警備業法対応、教育、事故・苦情、契約の継続可能性が重点項目です。
| 分野 | 主な資料・確認事項 |
|---|---|
| 財務 | 3期分決算書、月次試算表、借入、役員報酬、一時費用、現預金、未払費用 |
| 売上・契約 | 顧客別・区分別売上、契約書、契約期間、粗利、解約条項、再委託 |
| 人員 | 警備員名簿、雇用形態、年齢、勤続、資格、給与、配置、退職予定 |
| 労務 | 勤怠、残業代、36協定、最低賃金、社会保険、有休、就業規則 |
| 警備業法 | 認定、更新、変更届、営業所・区分、責任者、教育計画・実施記録、備付書類 |
| 事故等 | 事故、苦情、損害賠償、保険、行政指導・処分、訴訟・紛争 |
7.高く評価されやすい警備会社の特徴
結論:安定黒字と正常収益力の説明力、人材の分散、契約基盤、法令対応の整備、経営者依存の低さが評価を左右します。
- 安定黒字で、役員報酬等を調整した正常収益力を説明できる
- 稼働警備員と有資格者が複数おり、特定人物への依存が低い
- 顧客が分散し、継続契約と案件別採算を資料で示せる
- 法定教育、勤怠、労務、届出、事故対応の記録が整っている
- 社長が退任しても営業・採用・配員・顧客対応を継続できる
- 主要人材の残留条件と引継ぎ計画を早期に設計している

8.赤字でも売却できるか
結論:赤字でも、受注余力、稼働人員、有資格者、優良顧客、拠点、買い手との相乗効果に価値があれば譲渡可能性はあります。ただし赤字理由と改善可能性を数値で説明する必要があります。
- 採用費や一時費用による一過性赤字か
- 不採算契約や価格転嫁不足による構造赤字か
- 本部統合や人員融通で固定費を減らせるか
- 未払債務や行政・労務リスクを差し引いても買収合理性があるか
9.想定される買い手
結論:買い手候補は業種名だけで決めず、対象会社の警備区分、営業地域、顧客構成、人員の相互補完性を基準に選びます。
- 同業の警備会社:隣接地域への進出、人員・顧客・営業所の獲得
- ビルメンテナンス・総合施設管理会社:設備管理、清掃、警備の一体提供
- 建設・人材関連会社:交通誘導人員や採用・配員機能との連携
- 不動産・建物管理会社:管理物件へのサービス拡張

10.売却前に準備する資料
結論:認定・届出、営業所・区分、責任者・資格者、顧客別売上、警備員名簿を最優先に、財務・契約・人事労務・コンプライアンス資料を段階的に整えます。
| 優先度 | 準備するもの |
|---|---|
| 最優先 | 認定・更新・変更届、営業所と警備区分、責任者・資格者一覧、顧客別売上、警備員名簿 |
| 財務 | 3期分決算書、直近月次、借入一覧、役員報酬、非経常・一時費用、案件別採算 |
| 契約 | 主要顧客・外注・賃貸借・リース・保険契約、支配権変更・譲渡制限条項 |
| 人事労務 | 雇用契約、就業規則、賃金台帳、勤怠、有休、社会保険、退職金、36協定 |
| コンプライアンス | 教育計画・記録、備付書類、事故・苦情・行政対応・訴訟履歴 |

11.警備会社M&Aの流れ
結論:初期相談から最終契約・クロージングまで、警備業法・人員・契約の精査を織り込みながら段階的に進めます。
| 段階 | 工程 | 警備会社での要点 |
|---|---|---|
| 1 | 初期相談・秘密保持 | 目的、希望条件、非公開範囲を確認 |
| 2 | 簡易評価・資料整備 | 正常収益力、人員、認定、契約、リスクを整理 |
| 3 | 買い手探索 | 同業・周辺業種からシナジーのある候補を選定 |
| 4 | 意向表明・基本合意 | 価格、スキーム、主要人材、独占交渉等を合意 |
| 5 | デューデリジェンス | 財務・法務・労務・警備業法・契約を精査 |
| 6 | 最終契約 | 前提条件、補償、雇用・契約・認定対応を明記 |
| 7 | クロージング・引継ぎ | 対価決済、株式・事業移転、届出、説明、PMIを実施 |

12.従業員・取引先へ伝えるタイミング
結論:早すぎる開示は退職や契約不安につながる一方、遅すぎる説明は信頼を損ないます。必要な法的手続と本人同意を踏まえ、開示対象、順番、説明者、雇用条件、問い合わせ対応を計画します。
警備会社では人材そのものが事業承継の継続性に直結します。特に責任者、有資格者、隊長、配員担当、主要顧客担当者については、情報管理と残留条件を個別に設計します。

まとめ|廃業を決める前に、人・契約・認定を含む事業価値を確認する
警備会社の価値は、決算書に表れる利益や純資産だけではありません。稼働警備員、有資格者、教育体制、顧客契約、営業エリア、地域の信用は、長年かけて築いた事業資産です。
一方、認定・届出、労務、教育記録、契約承継に問題があると、価格調整や取引中止につながり得ます。売却を決めていない段階でも、資料を整理し、株式譲渡と事業譲渡の違いを確認し、自社の強みと課題を把握することが第一歩です。
アイアールアイM&Aコンサルティングでは、M&A仲介、事業承継、会社売却に関する相談に対応しています。会社所在地、警備業務区分、警備員・有資格者数、主要顧客、直近の売上・利益をご準備いただくと、初期相談を進めやすくなります。
よくある質問
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👤 監修者
佐藤 信(さとう あきお)
2026.09.02 更新
