M&Aコンサル用語集TOP / ハ行 / フリーキャッシュフロー閲覧数:274回
M&A用語解説
フリーキャッシュフロー(ふりーきゃっしゅふろー/Free Cash Flow)
フリーキャッシュフロー(FCF)とは、企業が事業活動によって獲得したキャッシュのうち、自由に使える部分をいいます。財務諸表の分析実務では、キャッシュ・フロー計算書における営業活動によるキャッシュ・フロー(本業の現金収支)から、投資活動によるキャッシュ・フロー(設備投資や有価証券の取得・売却等による現金収支)に相当する支出額を差し引いた金額として算出するのが一般的です。投資活動によるキャッシュ・フローは通常マイナスで表示されるため、財務諸表分析の簡便的な手法として、営業活動によるキャッシュ・フローに投資活動によるキャッシュ・フローをそのまま加算した金額をフリーキャッシュフローとすることもあります。ただし、投資活動によるキャッシュ・フローには設備投資等の支出のほか、資産売却による収入等も含まれるため、設備投資額のみを差し引く算式とは一致しない場合がある点に留意が必要です。営業活動・投資活動の区分の定義は、企業会計審議会「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」に基づきます。
もっとも、M&Aにおける企業価値評価でDCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)に用いるFCFは、上記の財務諸表分析上の算式とは前提が異なります。日本公認会計士協会「企業価値評価ガイドライン」では、有利子負債に係る支払利息や配当金など特定の資金提供者へのキャッシュ・アウトフロー控除前のキャッシュ・フローを「営業フリー・キャッシュ・フロー(OFCF)」と呼び、事業価値の算定に用いるとしています。実務上は、税引後営業利益に減価償却費を加算し、設備投資額と運転資本の増減を差し引いて算出するのが代表的な算式で、企業全体(債権者・株主の双方)に帰属するという意味でFCFF(Free Cash Flow to Firm)とも呼ばれます。資本構成(有利子負債の有無や大小)に左右されずに事業そのものの収益力を評価できる点が、買収価格交渉の基準として広く用いられる理由です。
これに対し、FCFFから支払利息(税引後)を差し引き、有利子負債の純借入額(借入による収入から返済による支出を差し引いた額)を加算して株主に帰属する部分だけを求めたものはFCFE(Free Cash Flow to Equity)と呼ばれ、株式価値を直接算定する場合に用いられます。「FCF=営業キャッシュ・フロー+投資キャッシュ・フロー」という財務諸表分析上の簡便的な算式と、企業価値評価の実務で用いるFCFF・FCFEの算式とでは、起点となる利益や運転資本増減・支払利息の扱いといった前提が異なるため、両者を同一視せず、算式を示す際にはどちらの定義に基づくものかを明示することが実務上重要です。
※本稿における算式は代表的な一例であり、実際の分析・評価では利用する財務データや評価目的に応じて算式の前提を確認する必要があります。
DCF法による企業価値評価では、事業計画に基づいて将来一定期間のFCF(前述のFCFF)を予測するとともに、予測期間後の価値(継続価値・ターミナルバリュー)を算定し、それぞれをWACC(加重平均資本コスト)で現在価値に割り引いたうえで合計することで事業価値を算出します。ここに非事業用資産を加算し、有利子負債を控除することで株式価値に至ります。FCFの見積り(事業計画の精度)とWACC・継続価値の前提設定は、算定される企業価値を大きく左右するため、M&Aにおける譲渡・譲受価格の交渉で重要な論点となります。
実務上は、大型投資の実行時期等でFCFが単年度でマイナスとなる局面もあるため、単年度の数値だけで判断せず、複数期間の推移や投資の性質(既存事業の維持更新投資か、新規の成長投資か)を踏まえて評価することが重要です。
