動物病院のM&A
動物病院業界も、現在ドクターの高齢化が進んでいます。動物病院は、大変重労働であり、通常、長時間労働が当たり前となっています。ペットの健康を守っているドクターのお気持ちとは裏腹に、ドクターの自身の生活はハードな状況を余儀なくされていることとなっています。
このようなハードな環境下でのお仕事をされてきた動物病院院長において、最後の廃業の仕方が、引退後の人生をより豊かに過ごしてゆくための最後のチャンスとなります。
辞め方に応じた、メリットデメリットをご理解いただき、動物病院の承継にM&Aのスキームを上手にご利用いただきたいと思います。
犬・猫の推移は減少している一方、動物病院は増加傾向です
1.動物病院の辞め方
(1)単に廃業する
デメリット
- 売却代金を得ることができない
- 廃院コストがかかる
(廃院には建物解体や内装原状回復費用、医療機器処分費用、従業員退職金、借入金、法的な手続費用など数百万〜1千万以上のコストがかかります)
- 顧客と動物への医療提供を継続できない
- 従業員を解雇することになる
(2)知人の先生、勤務していた先生に譲渡する
メリット
- 多少の売却代金を得る(知人なので高額では難しい)
- 廃院コストがかからない
- 労務問題や資金繰りなど経営責任から解放される
- 顧客と動物への医療提供を継続できる
- 従業員の雇用を継続できる
デメリット
- 簡単に譲渡先がみつからない
- 後継者に信用がないので借入金の個人保証から解放されない
(3)M&Aを利用して売却する
メリット
- 多額の売却代金を得ることが出来る
- 廃院コストがかからない
- 借入金の個人保証の解消、不動産担保の解除
- 労務問題や資金繰りなど経営責任から解放される
- 顧客と動物への医療提供を継続できる
- 従業員の雇用を継続できる
- 譲渡先が見つかりやすい
- 不動産の売却収入又は賃貸収入が得られる(不動産所有の場合)
2.動物病院院長の共通のお悩み
動物病院を経営している、院長からよくご相談を受けるのは、次のような事項です。
これらを、一気に解決するのに、最も有効な方法が、M&Aを利用した、動物病院の承継ということになります。
- 後継者問題
- 親族や知人に後継者がいない
- 親族に医師がいるが、継承する意思がない
- 子どもには継がせたくない
- アーリーリタイア
- 引退してセカンドライフを楽しみたい
- 新規事業に挑戦したい
- 海外へ移住したい
- もう一度、専門医療を追求したい
- 事業再編で経営を効率化したい
- 分院を売却し、本院の経営に集中したい
- 分院を売却し、関連事業など新規事業へ投資したい。
3.動物病院の開業の仕方
現在、動物病院を取り巻く環境は、一昔前に比べてかなり厳しくなってきていると言わざるを得ません。その理由は、動物病院数の増加、ペットの高齢化、飼い主の高齢化、ペットの多様化、ペットの擬人化、ペット医療技術の急速な変化などであり、競争の激化に伴い、新規開業のハードルは年々上がって来ています。
このような業界の情勢の中で、M&Aによる動物病院の承継は、譲り受ける側においても、次のようなメリットを生み出します。
譲受側のメリット
- 患者を引き継ぐことにより開業当初から収益が見込める
- 工事費や医療機器など開業初期費用が抑えられる
- 金融機関にも融資が受けやすい
- 開業準備期間と費用を圧縮できる
4.M&Aの進め方
売却準備
- ご相談の連絡をいただく
- 打ち合わせを行う
・決算書やPLの提出
・秘密保持誓約書を提出
・仲介契約書のご説明
- 仲介契約書締結
- 追加資料の取得
- ノンネームシート、情報公開シートの作成
- プレゼンツールの作成
マッチング活動
- 自社HPへのアップ
- M&Aマッチングビズ(当社マッチングサイト)アップ
- 当社メルマガの配信
- ポータルサイトの登録
- リストに基づく電話アプローチ
クロージング活動共通
- 買主からの反響
- 秘密保持契約の締結
- 買主への情報開示とヒアリング
- 買主仲介契約書締結
- 買主側意向表明書取得
- トップ面談
- 合意(基本合意契約書)
- デューデリジェンスの実施(※譲渡契約後の場合もある)
- 譲渡契約締結
- 引渡・決済(※事案ごとに方法が異なる)
- 引継ぎ作業
・免許の引継ぎ
・従業員の引継ぎ
・顧客の引継ぎ
5.事前準備
M&Aに取り組む前にやっておきたいポイントについて、法人化している場合と個人事業の場合とで確認して見ます。
業績向上・経費削減
譲受側は病院を承継することでさらに事業の成長を図ろうとしています。
譲受側にとって魅力ある病院と映るよう、少しでも業績の向上や無駄な経費の削減につとめておきます。
貸借対照表のスリム化
資産のなかに、事業に必要のない資産が多く存在する場合には処分などを行い、貸借対照表のスリム化をしておくことも必要です。
強みをつくる
なかなか短期間で対応できる問題ではありませんが、常日頃から自社のセールスポイントとなる「強み」を意識した経営を行っていることが譲渡の際の評価となります。
経営幹部への業務の権限委譲
院長のワンマン会社では、承継後に事業経営に支障が出ないか心配になります。
計画的に勤務医やスタッフに業務の権限委譲を進めておくほうが望ましいといえます。
すなわち、院長が交替しても事業が運営できる体制にしておくことです。
公私のけじめ
院長個人と会社又は事業の線引きをしっかり行うことが必要です。
事業上の必要性が乏しい資産の賃貸借や社長しか利用しないゴルフ会員権、高級車の保有などについて公私のけじめをつけておいたほうがいいでしょう。ただし、税務上のこともあるので、少なくとも何が、実質的に病院経営に必要でない費用かの認識をしておくべきです。
病院内規程等の整備
病院内のマニュアルや病院規程で未整備のものがあれば整備しておいてください。
会社として当然あるべきと思われるものは揃えておくに越したことはありません。
分散した株主の整理
法人の場合、株主がかなりの数にのぼる場合や会社にとって好ましくない株主がいるときは、できる限り事前に整理しておくほうがいいでしょう。
譲り受側としても株主関係が複雑であれば及び腰になる可能性があります。
6.動物病院のM&Aにようる承継を成功させるポイント
情報漏れを厳に防ぐ
M&Aの準備段階では、極めて限定した範囲の人に情報をとどめることです。
M&Aで最も怖いのは、途中の情報漏れにより、案件自体が消滅してしまうことです。
専門の仲介業者をつかう
M&Aによる承継を上手に進めるためには、専門的な知識・経験を持っている動物病院に経験豊富な仲介機関に相談することです。取り扱いになれた専門知識を有する機関に任せるのが良いといえます。
希望を早い段階で仲介業者に伝える
M&Aを進めるにあたっては、売却の対象範囲、売却金額の等は勿論のこと、そのほかの子細な希望条件を早い段階で仲介業者に伝えるべきです、事前に相談しておけば、問題ないことでも、後から修正がきかない状況がたびたび発生してきます。
売り手としての意思を早めに伝える方が譲受側も検討しやすくなります。
隠し事はしない
譲受側のデュー・ディリジェンスを受けるときは、譲受側に対して都合の悪いことでも隠し事をするべきではありません。
後からそれが発覚した場合、せっかくの案件が頓挫することもあり、事後に発覚した倍は損害賠償の請求対象とされることもあり得ます。
交渉終了後も譲渡実行まで慎重に
交渉が終了した後も会社の環境整備に気を配る必要があります。
仮に、交渉時には想定していない事態がクロージングまでの間に出てきた場合には、白紙撤回という事態も考えられます。
まずはご相談ください